夢を見た。
赦される夢だ。

この身に重なった罪咎が、淡く解けていく。
罪のしるしが、日に焼けた肌が元の色を取り戻すさまに似て薄くなり、くうに溶ける。
あたかも、はじめからそんなものはなかったかのように。

故郷の美しい黄昏が目の前に広がっている。
あの、まっすぐに目を射るような藍と紅。
小さく輝く宵の星。夕暮れの風のにおい。

けれど夢の中でふと気づくと、また、あまりにも深い闇が私自身を呑んでそこに在る。

眠りのうちにさえ、罪を忘れることもできない。
息が詰まって仕方がないのに、自分の呼吸から逃げられるはずもない。

闇の中で、ウィスプが、私の影から浮かび上がってくる。
仄かな瞬き。訴えかけるようにちらちらと揺れて明滅する、一塊の焔。
その色は、故郷の黄昏の空を写しとったようだ。

ウィスプは言葉を発さない。
何を伝えたいのか、私にはわからない。
この世界に流れ着いてからもうずっと傍にいるのに、互いの意志がこんなにも遠い。
戻るすべを知らない故郷が、あまりにも遠いように。