誰かに許しを乞うとき、私は、一体何を赦されたいのだろう。

言葉は薄っぺらで、本当の望みを私自身すら知らない。
罪を許されることはないと知っていて、何を願うのだろうか。

左腕の罪のしるしを、なかったことにしたいと思ったことはない。
私はずっとその痛みに寄り添い続けてきた。これからも。
この罪を忘れることは、かあさんを忘れることだ。
そんなことは、絶対にできない。

私をたった一人、愛し、許してくれたひと。
いのちを、そして心を。

この世界で、私のことを知るひとが、そして私と言葉をかわしてくれるひとがずいぶん増えた。
それを喜んでいいのかどうかも、私にはわからない。

私はかあさんを不幸にした。
他のひとを不幸にしないと、どうして言えるだろう。
自分自身さえ幸福にはできない……きっと、一生。

それでもそばに居てくれと言えるほど、私は厚顔にはなれなかった。
ただ遠くにいて、たまにでいい、言葉をくれて。
そして私を、いつか、忘れてくれればいい。

そう、思っている。

かあさんは私を捨てるべきだった。
そして忘れてしまうべきだったのだ。
私が生まれた日、そうしておけばよかった。
ただそれだけで、よかったのに。

そうしたところで、誰も責めはしなかっただろう。
私は片角、不吉のしるしだ。

角のない額に触れる。

角がほしいと思った記憶は、ほとんどない。
角を得るよりもただ、私は、消えてしまいたかったのだ。
かあさんのために。
そしてなによりも、自分が、もう苦しまないために。