プルのことで一つ気になる点がある。
あいつ自身もそう名乗っていたが、普段の素行や言動、魔力の流れなどから考えて「悪霊にもなれなかった思念の集まり」という事は間違いなさそうだ。
地方によってはレギオンと呼ぶこともあるらしい。

それは分かるし、そういう霊が居る事も知っていた。
だがその手の霊は「強い共通の目的」……たとえば嫉妬だったり、恨みだったり、そういうものを核にして集まっているのが普通だ。
ひとつひとつが弱い霊・思念ならば、それらを強く誘引する核がなければそもそも形を保てないのだ。

ところがあいつはどうだ。
いつも呆けて、恨みや嫉妬のような核になりうる強いエネルギーを感じない。
核がなければ思念の群れは霧散するのが道理。
もしや明日にも消えるのではと思いながら日々を過ごしていたが、そんな様子もない。
むしろ、力が強くなっている。エンブリオの力をもその身に宿して。




あいつは、なんだ。