韮市で手に入れた物品のせいで、だいぶ荷物がパンパンだった。
　スープやスコーンは平らげたし、カマック殿に渡す分は渡した。
　他の二人にも色々と渡すものはあるが、どうも今は分散しているらしく。

　しかしネイ殿のランプは格別だ。
　今までのおんぼろランプは、もはや隙間風で火が消える有り様であったし。
　こころなしか、灯されている火に安らぎを感じる。

　菫の砂糖菓子は、色彩の似ているレイン殿に分けようかと思っていたが——。
　その、ちょっと、摘んでしまった。
　……わからないよね？（ 小さめの筆跡で書かれている ）

　魔硬石膏は、ダイガ殿に渡そうかな。
　このずっしりした感じと真っ直ぐなまでの輝きは何となくだけど彼に似ている。

　お茶は今度ゆっくり出来る時にでも飲もう。良い香りも添えて。
　黒い花は結局買わずに通りすぎてしまったけれど。
　うーん、買っておけばよかったな。ちょっと後悔。

　朝方何となしにランプの火を眺め、冊子を開き、友の姿を思い馳せる。
　今頃彼らはどこにいるのだろう？
　一体私達はいつになったら。

水に浮かぶ花をモチーフに作られた掌サイズの置き型ランプ。火を灯すと馥郁とした花の香りが漂う。
ランプとして使うだけではなく、いざという時の香料として使用が出来る為、
身だしなみに気を使う人達が持ち歩いているそうだ。
　

ナスル——
よ

ナスルは——何を護ってるの——？
ナスルには、護りたい・護る”なにか”が——あるのかな——？

ソウ——。
ナスル——護るものなの——？

ボクに聞くな。

さっきそのひとがいったみたいに、”せんじゅつし”ではあるんじゃないのか？
”せんじゅつし”ってむずかしいことはよくわからないけど、いろんなことをしってたり予測するモノ、だった気が……？

ナスル——
よ

ナスルは——何を護ってるの——？
ナスルには、護りたい・護る”なにか”が——あるのかな——？

ソウ——。
ナスル——護るものなの——？

ボクに聞くな。

さっきそのひとがいったみたいに、”せんじゅつし”ではあるんじゃないのか？
”せんじゅつし”とかむずかしいことばはわからないけど、いろんなをしってたりそこから予測するモノ、だった気が……？

（おお、お嬢にしちゃ考えを第三者へと、きちんと声に出すのは珍しいのお。頼れるかも？　と思うたかの？）

（ってもなあ……今のって、”戦術師”と“占術師”をごっちゃにしてるよな、多分）

「…おう、先日の仮面の兄ちゃんか。態々律儀なこった。
料理に関しちゃそれなりに数こなしてるからな、そう言ってくれるとこっちも腕を揮った甲斐があるってモンだぜ。
大抵はヒマしてるから、近くを通り掛かった時は遠慮なく声掛けてくれ」

「…んー、随分と肌が荒れてるみてぇだし、今度はビタミン豊富なメニューにでもするかね？
いや、何でもねぇよ、冗談だ。ま、俺に任せてくれりゃ期待を裏切らない事だけは約束するぜ」