このところ、自分の中の何かが足りない気がする。
足りないというか、減っているというか、そんな感じ。
いや、力がないわけじゃなくて、むしろ前よりも増したというか。
短期間で、これだけの精霊……じゃなかった、エンブリオと契約したんだから、力が増したように感じるのは当たり前か。


ソルや、エクラ、アヴェルスも姿を見せるようになったし、こいつらの存在を強く感じることができるようになったのは、嬉しい。
まだしゃべってはくれないけど。




中でも、ヴォルカンの存在感は日増しに強くなっている……ような気がする。
相変わらず、小さなトカゲ姿でチョロチョロしてるけど、たぶん、もっと違う姿だと思う。

赤髪の男がヴァランタンに近づいてくる。
事典亭や狩猟部で何度か姿を見ることはあったかもしれない。

グノウの真似をする相手を見て小さく笑い始めた。

海の無い世界にたどり着いたならば、目も当てられない事になる。泳いでいる視線への追い討ちになるかもしれないな、と思いつつ。

　似たような事で悩み始めるトカゲだった。

大事そうに両手で受け取り、眺めている。

長い袖の中から、華奢な生身の手を見せながら。

>「一応、それなりの人脈はあるつもりだ！たぶん！」

自分で言っておいて実はそこまで期待してはいなかったらしい！

>「とりあえず、数日分はおさえとくから」

その程度の持ち合わせには事欠いていない、とアピールしているつもりは特に無いらしい。

　…と書かれた垂れ幕を足で掴みながらあちこちを飛んでいる