発電ができるようになり、工具もやや揃ってきたところでふと気がついたが、この世界の法則に慣れる必要があるのではないだろうか。
今まで実験器具の調達用にと思い、元の世界の物理法則に従って材料やエネルギーの調達を行ってきたが、よく考えると自分でも武具の作成で既存の物理法則ではあり得ないものを作成している。
だとすれば、私が求めているような既存の実験器具も同様に訳の分からないものから作れる可能性も高い。
これがいわゆる魔力の影響によるものかどうかも含めて、今後調査する必要がある。


平原などの開けた場所ではそろそろ国王側の兵との戦闘が起こっているようだ。
安全策として森の中を進んできたが、そろそろ全体の状況がどうなっているかを確認するためにも一度森を出た方が良いのかもしれない。

ホッチキスで止められた、数枚の書類束を渡し、

　薄っぺらい、微笑み。
　呪術師は、一言も『気にしてない』とは言わなかった。

　そう言って、するりと。
　呪術師は細い両腕を広げた。布擦れの音。貼り付いた微笑み。和服めいたローブの採寸をさせるような、仕草。

右眼で『視る』。
その先に映る、４人。いや。違う。何かが——。

侵入。侵食。何かが流れ込んでくる。
それは遮断。或いはは拒絶。万象を左右する右眼さえ阻む、異様な力。
仮面と共に在る男を視てはいけない。第六感が警鐘を鳴らしている。
あれを視たら、俺は恐らく——。

しかし、想起される己の決意。
己が右眼に打ち克とう決めた、己の覚悟。
それが、再び瞑ってしまいそうな瞼をこじ開ける。

魔異の右眼が怪傑Xの姿を捉えた瞬間、仮面の表情が一瞬変わったように見えた。
そしてその眼は、怪傑Xの中の何かを垣間見た。

結局それが何だったのか、魔異が理解する事は叶わない。
脳が…そしてカゼヨミがソレを理解してしまう前に、このビジョンは絶たれたのだから。

魔異の右眼に映るのは、怪傑Xの実像のみ。
それ以上は、何も視えない。何も解らない。何も感じられない。

目の前の男……怪傑Xは、まるで何事もなかったかのように魔異に問いかける。