傭兵なんて仕事をやっている以上、怪我をするというのはどうしても避けられない。
いや、痛いの嫌いだし、全力で避けられるものは避けるようにしてはいるけどさ。
それでも、怪我をするときはするし、エンブリオ達の力を借りて回復するのも限度がある。
特に戦場だと、どんなに怪我をしていても動かなきゃいけない時もある。
敵に囲まれてかなり怪我をしている時とか。
だから、傷薬だけじゃなく痛み止め薬も必須だ。特にちょっと強めで即効性のあるやつ。


痛み止めは痛覚が鈍る変わりに、他の感覚もマヒするからできればあまり使いたくはないんだよなぁ。
いや、そもそも必要に迫られる状況に立ちたくないんだけどさ。
でも、必要なものはしょうがない。死ぬよりずっといい。




俺の場合はこんな感じで必要だから痛み止めを使っているんだけど、グノウはどうだったんだろう。


この前、大廊下でグノウに会った際に、「痛み止め薬を持ってないか」と聞かれた。
丁度買い足したところだったから、そのうちのいくつかを渡した。
いやあ、買い足しといてよかった。グッジョブ俺！
とりあえず普通のだけを渡そうと思ったんだけど、「できれば、少し強めのやつも無いか」とグノウの言葉が続いた。
少しどうするか悩んだが、比較的副作用が少ないやつを選んで「強めのやつ」も渡した。
（かなり強いやつも持っているが、後でかなり感覚が鈍ったりと副作用が強いので、それは省く）


理由を聞くと、「戦闘もこなして休みもなければ、ガタもきますし頭痛の一つもします」と返された。
まあ、そうだよな、と納得できるといえばできるが、「強めのやつ」を求められたのが少し気になる。
あれ以上追及しても、グノウのことだからそれ以上のことは答えてくれなさそうだけど。




エンブリオは「契約主の生命力」で力を貸してくれる。
俺たちメルンテーゼの人間にとっては普通のことだけど、他の世界から来たやつにとって、それはどう影響するのだろうか。






あぁ、それよりも、次はめんどくさいやつと戦わなきゃいけないんだった。
集中しないと。
痛み止めも傷薬も使わなくて済むように。





お借りしました。
ENo.176 Gunow-Swarold

冷然を装ってそう告げる。

全力ダッシュと共に、叫び声が遠ざかる。

ヴァランタンを見遣りながら、きょと、と小首を傾げる

自分が名乗る名である「ギ」とだけ、簡潔な呼び名。

急激に大きくなった姿故に戸惑いは分かる。
こちらもこちらで目線が近くなって戸惑いの色はあった。

盛んに子供じみた文句をぶつけてきたが、すぐにゴホンと、しわぶきを一つ。

と、自らの多弁に気付き、一旦、口を閉ざす。

ブーイオはヴァルに頭を垂れて鼻先を近づける。撫でることが出来そうだ。

鞍を確めながら、手綱を差し出す。
ヴァル自身の光属性が強すぎたり闇が苦手でなければ、好きに馭せられるだろう。

一瞬だけ漂わされた、
ぴりとした雰囲気にヴァルを見る。

望むべきを与えないで、ただ時間を使わせるのは、
不誠実であるように思うと。
そう零す。

言って、胸元を軽く叩く。

確かに普通外の世界に出る技能がないなら、友人は同じ世界に限られてくる。
愛着がわかないほうが嘘というものか。

凄いのだろうか。
『外』が当たり前の自分からすれば、彼の思考は新鮮だ。
続く問いにはどう説明したものかと険しい顔。

イメージが湧くかな？と。
心配げに。

腕を観察する相手をじっと見ている。

手放された右腕に、左手で触り