Vanetta's Diary - Page.35


最近達筆の練習でもしているのだろうか？


珍しく、いつもとは違うメンバーとパーティを組み、いつもとは違う場所に来ている35日目。
現在位置は王城深部、天空水廊アクアパレス。空中に浮かぶ硝子の回廊。
二重構造になっているらしく、内側の通路と外周の間には通るものを誘うように、
清流が遥か空中回廊の向かう先──すなわち王城へと流れ続けている。

その光景は幻想的の一言。物見遊山にはうってつけ。
幸か不幸か内側の通路は幅も高さも十分な広さがあり、恐らくは（他の場所同様）現れるであろう魔物との戦闘にも不自由する事はないだろう。
更には硝子製構造物──しかも高空の──の重大な不安点である強度に関しても、
少なくとも私が軽く調べた範囲では全く問題がなかった。

材質の強度もさることながら、何らかの魔法的或いはそれ以外の防御機構が備わっているものと思われる。
建築からこの加工に至るまで、このメルンテーゼ現王派の技術力の高さには驚かされる。

その他にもエンブリオ研究施設や単純な武力、そしてこの王城そのもの。
得体こそしれないものの、恐れるという感情を抜きにすればその様々な強さは実に興味深い。
私がそれらの真実に触れるのは現状では難しいでしょうけど、
幸いにも熱心な情報屋が新鮮で確度の高い情報をもたらしてくれる。

このメルンテーゼという世界、そしてこの世界にあるあらゆる不思議の源『エンブリオ』
この世界に滞在し続け、この一揆に参加し続け、この王城を侵攻し続ければ、
いずれは私とは言わずとも誰かが謎を解き明かしてくれるのだろうか？


興味を引く未知の何か。それこそが私の行動原理。
さあ、心の赴くまま動き続けていきましょう。



追記：魔法剣士アムフェイについて
……ちょっと、暴れるのに夢中で姿をよく見てなかった。せっかくの機会だったのに。
ただ、背中で鳴り続ける剣戟と爆発の連音。懐かしい感覚だった。
あの戦いにも十分についてこれるほど急激な成長も遂げたようだし──
ひょっとしたら。いずれは『彼』と見まごうほどの存在になるのかもしれない。
偶然か運命の悪戯か。またひとつ、楽しみが増えた。

全然分かってないらしかった。

そっとあなたの背中に手を回し、身を預ける。