水のようにすり抜けて、羽ばたいていく鳥みたいなヤツはどう捕まえればいいんだ。


今日はウノハナクタシに、朝の鍛錬に付き合ってもらった。
軽快に動き回る上に、剣の一撃一撃が重いとかなんなんですか。
（そして、あの剣はいったい何でできているんだ）
槍を振り回しても蹴っても、するりと躱されるし。
鍔迫り合いに持ち込んでも、上手く受け流されるし。
なんというか、水を切ろうとして無駄に頑張っている気分。


癪だったので休憩中の隙を見て思いっきり槍を振るったら、鳥の群れになって避けられてしまった。
その上、思わず「ずりぃ！」と言うと「不意打ちはどうなんだ？」と返されてしまった。
ごもっともすぎて泣けてくる。

だけど、あんな掴みどころがないものをどう掴めというんだ。
いや、掴まなきゃいけないんだけどさ。うん。








ウノハナクタシは何かに似ている気がする。
雰囲気か、性格か、気配か。その「何か」は分からないけど。


お借りしました。
No.475 卯の花腐し

先ほどからコロを警戒しながら、逃げ回っているようだ。

相手の言葉を聞き眉を寄せ怪訝そうな表情を浮かべる。
だが怒っているなどではなく純粋な疑問として"わからない"といったような風で…

きょろきょろ　　　ピタっ じぃ

以前と違い、子供から大人の姿になっている女は、あなたを見ると嬉しそうに微笑んだ。

不自然に間合いを取るヴァルを少しからかうように笑う。
自らの性別が分からないとでも思ったのかもしれない。

傭兵を雇った経験が無いようだ。首を傾げてヴァルを見る。
続いて現れたナイトスピリットの不穏な外見には僅かに眉を寄せるが、異論は唱えない。

口笛を短く鳴らすと何処からともなく、紫電を纏った黒馬が駆け参じた。
首を振って鼻嵐をひとつ。シャグランに挨拶するように頭を垂れる。

ひとまず夜番はシャグランとブーイオに任せ、少ないが報酬も上乗せすると言い添えた。

差し出された青年の手を、鳥の鉤爪のような獣の手が慎重に握り返した。
爪で傷つけないように。

何か心境の変化がなかったのかとそう問われれば、
少し黙り込んでから口を開く。

言葉を吟味しながら選ぶように、なにか、辿るように。

詰まり途切れる声。強く抑制を意識する。

だから無為なのだとそう語る。
自分にとってどうであろうと、相手にとっては。

その気合の入った返答に、面食らってしまう青年である。
自分にとって当たり前の行動が他人に取ってそこまで興味を引くとは思っていなかったのだろう。
目をパチクリとさせていた。

帰ってこれることを前提に。
その言葉にポツリと問う。

今まさに騒乱のさなかにあるメルンテーゼへの感想をこぼすのである。
そして、続く問いには軽く小首を傾げ。

相手の言葉が示す場面に思い至って、慌て出し。

なんと弁解すればよいかと、視線も言葉もふらふらと。

視線を感じてヴァルの方を見る。

１５Ｋｇの冷たい腕を差し出した。