隊を率いている責務が研究棟への再戦を遅らせる。
　　　　　　　　　　傭兵ヴァランタン・バルデュワンとの契約はそう長くは無い。
　　　　　　　　　　以降も協力関係を密に結んで貰える事になったが、
　　　　　　　　　　下手を打って皆の士気を落とすことなく、かつ確実な勝利が必要だった。
　　　　　　　　　　準備が整うまでは、逸る気持ちを抑えなければならない。

　　　　　　　　　　熱を帯びる心を冷ますべく、私は夜の砂地へと出掛ける。
　　　　　　　　　　ナスル＝アインのペンデュラムが示した通り、砂漠に一夜だけ咲く花は結局見つからなかった。
　　　　　　　　　　もし見つかったなら——仲間の為にリンテントポーゼ・リカーに漬けて花酒にしたいと思っていた。
　　　　　　　　　　どんな花なのだろう…？卯の花腐しも今まで一度も見た事が無いのだろうか？


　　　　　　　　　　私は占い、というものをまだよくは知らない。
　　　　　　　　　　故郷の里にもシャーマンを務める者はいるけれど——
　　　　　　　　　　彼らは吉凶を占う時、霊的な力を使うのではなく、
　　　　　　　　　　空や大地の動きをなぞり、シグナルを読みとり、それを私達の言葉に訳して伝えていた。

　　　　　　　　　　ならば、人には今のメルンテーゼを占う事も出来るのだろうか。
　　　　　　　　　　未来に住んでいるような人は居ても、未来がどうなるかなど、確かな景色は誰にも見通せない。
　　　　　　　　　　故に占いには不信になりきれない、抗い難い魅力を感じている。


　　　　　　　　　　「おみくじはどうだったの？当たっていた…？」

　　　　　　　　　　ユキナさんに聞かれて、おみくじの内容を思い出す。

　　　　　　　　　　《これから何かを始めるなら、大きく成功できるかもしれない。
　　　　　　　　　　　もしかしたら、身近な誰かが幸運をもたらしてくれるかもね？》

　　　　　　　　　　成功——何を以って私は成功と言えるのだろうか。
　　　　　　　　　　少なくとも今、仲間に恵まれているのは当たっているのかな。
　　　　　　　　　　たった二人で始まった隊が、今は賑やかで心強い集まりとなっている。


　　　　　　　　　　そういえばナスルさんのおみくじは、ヴァルさんも引いていたような。
　　　　　　　　　　なんて書いてあったんだろう？

先ほどからコロを警戒しながら、逃げ回っているようだ。