ここに来てどれくらい経っただろうか。
未だに愉快な名前の王様が、この広大すぎる城のどこにいるのかもわからない。
大量のネクターもどこかに貯蔵しているのだろうか。

先がなかなか見えないというのは、やはりあまり精神衛生上よろしくない。
運良く、始終気を張らなければいけない状況ではないから、それほどきつくは無いけど。


ふと、手元でもてあそんでいた金貨を改めてみる。
前金の一部だ。
依頼主、というか依頼村？あぁ、でも直接俺と交渉してたのは村長だから、村長が依頼主かな？
とにかくそいつから前金で貰った分。
小さい村にしては、物流の途中にあった村だけあってそこそこの量がある。

この一揆が成功したら俺は残りの報酬がもらえる。
そしておそらく村のヤツは、領主から一揆に協力した分のネクターか何かを貰おうという算段だろう。
そうそう上手くいくとは思えないが、あそこの村長は口が達者だったからなぁ。
失敗したら、村のヤツは俺のことなんて知らぬ存ぜぬで通すだろうし（余所者だしね）、俺はさっさとここから逃げ出す。
ここにくるまで通ってきた場所はメモしたし、なんとかなるだろう。
なんとかしないとまずいのだが。

なんとなく気まずそうに言った。割と人見知りなのかもしれない。

聞きなれない単語に、首を傾げる。

灯は、頼花の手の中で微妙に後ずさりながら、
舌をチロチロと出している。
飼い主に似たのか少し人見知りしているようだ。

応援しています、と笑って。

一瞬、勘繰る様に手の中の宝石を観察した相手の視線に目敏く気付く。
片眉を上げると、掌の上の宝石を一つ、放った。
…現物を手にとって確かめてみろ、という事なのだろう。

何かを思い出したのか、身体を震わせている。