1575日目。

さて。

さてさてさてさて。

まずい。坩堝だ。失念していた点が多すぎる。

敵を倒す攻撃力もない、攻撃を防ぎ続ける防御力もないじゃあハナシにならない。

…撤退も考えるべきか。

まだこの位置まで攻め込むには早かった、そう判断してまずは迂回し徘徊し、手数を、手駒を揃えるべきか。

今更攻める位置を変えるとして、それは英断というには遅すぎるかも知れないが、敗れない壁を叩き続ける愚策よりはマシだろう。

とりあえずは、不本意ながら負けた時の事を考えて、退路は用意した上で挑む方がいい。

たとえ今回負けたとして、次に会うときは蹂躙してやる。

…悔しい、という感情が理解できただけでも収穫か。

それに加えて今までの慢心を吹き飛ばしてくれたとも言える。

他の3人の目も前よりもむしろ向上心に満ちているといってもいい。

策は立てた。抜かりはない。あとは不透明な要素がどれだけ影響してくるか、だ。






———験体番号六番ノ手記、第八頁。





＊＊＊

そういいつつ手遊びのように弄ぶのはムイの持つエンブリオ、ノーム。

精霊や動物の姿としてエンブリオを引き連れる者が多い中、ムイはそれに該当しない。

ムイがエンブリオと称して持ち歩くそれは"石"。

指で摘める程度のサイズの半透明の石にはそれぞれぼんやりと光が宿っている。

ノームは碧色、デビルは紫色だ。

声を掛けても返ってくるはずもなく。静寂だけが辺りを包む。

エンブリオはその形状同様、契約の手順も人それぞれである。

共通して言えるのは『ネクター』という赤い花の花びらを使用する、という点だけ。

ムイの場合はこれを本人のいう『喰らう』という行為により吸収し、その逆流の要領で精製する。

起きていることだけ見れば花びらを手に握りこみ、次に開いたときには石が残っている、といった具合である。

なお、契約する種については精製時にイメージするものに起因する。

ギュ、っと花びらを握りこむと次に開かれればいつもどおり小さな石がそこに在る。今回は鈍色の光を灯した石。

これについても何となく、感覚でわかる。毎度のことだ。

…いや。

思いつきでノームを宿した石を握り、感情を送り込む。

…が、結果は無反応。

石を仕舞い込み、目を瞑る。

懐の中でチカリと碧の光が見えた。

そういうと中空で身を翻し湯屋があるであろう方向へ先導する。

値段はこれくらいだよ　と日本円で200円分のPSを握りこんで六に見せてみる。
物々交換は塩の場合二十匁ほど、手伝いの場合は湯屋の掃除や畑仕事などを例にあげた。

貴方がチームと共にいないそのタイミングになるだろう。
城下の広庭とも、また少し違う場所。

やや視界の悪い入り組んだその場所で、曲がり道に唐突に誰かとぶつかりそうになる。
気付くのが遅れれば、尻餅をついて倒れてしまうだろう。

ぶつかった相手は170cm程の金髪の女性。
少しよろめいた程度のようで、やや見下ろすように貴方を見ている。

言外に、小さかったから。と言う女性はあまり悪びれているようには見えない。

言いながら、煙草に火をつけて吸い始める。

完全に足を止めているところを見ると貴方に興味、疑念を抱いたようだ。

貴方は彼女の言葉に答えても良いし、とりあえず謝罪を求めても、とっとと逃げだしても良い。

目がカレーになっている！

ぬいぐるみと面向かって、ああだこうだと会話をしながら。

期待の篭った声で耳をぴこぴこ動かしながらそう問いかけます。

書物に書いてあっただけという話を聞いて、耳がヘニョっと垂れ

変えるきはないと聞いて笑いながら問いかけます。

突然近づいてきた六に対して驚いていたが…

匂いを嗅がれていることに気づいた。

突然の出来事に頭が混乱しているようだ…