1574日目。

…見事にしてやられた。

この調子で段階を踏んで手強くなってくるものと勝手に想定していたがそうはいかなかった。

敵の根城に近づけば、ソレ相応の警備が敷かれて然るべき。

後から考えれば当たり前のことだった。

今回は逃げ切ることは叶わなかったが、どうせ足踏みするなら勝つまでやる、か。

相手は確か"ブランチマン"と名乗っていた。

いつしか会った兵士が口にしていた名前だ。なるほど王ではなく騎士団副長だったか。

"元"と言っていたが解雇でもされたのだろうか。

兵士の散り際に名前が出てくるということはそれなりに信用されていたのだろう…。

実際に実力もそれに伴うモノだった。

それを差し置いての就任ということは"現"副長はヤツより有能ということだろうか。

そして"副"ということは当然隊長もその上に居るだろう。

つまり、明日も目にするであろうアレよりも強い障害が2つ以上存在するというわけだ。

いつだか言っていた戦術を改める必要性がこんなにも早く来るとは。




———験体番号六番ノ手記、第七頁。

——"ソレ"は手記を書き上げてパタリと本を閉じるとくく、と少し楽しそうに笑う。

緊張した面持ちで、角に触れる。
一度、二度と撫でてみて、右手の手袋を取り、また触れた。

そこまで口にして、はたと気がつきます。
この世界には、色んな種族が流入しています。

目の前の相手が一体どんな種族かなんて、分かったものじゃないのです。

そう考えたら、いきなりツノを折ろうとしたのも納得がいきます。

きっとあのツノは脱着可能にちがいない。
そう思ったのでした。

態度を改めようとしているようですが、あまり上手くいっていない様子。

笑ったり、謝ったりする六さんを、じっと睨みつけます。

一字一句、言い聞かせるようにそう言います。
そうしてから、されたことを思い出して、ふいとうつむいてしまいました。