ザパンさんは私を立ててくれるが、戦いも交歓もそつがなくて、新しいことをどんどん学んでいるようで、自分が恥ずかしくなってくる。この人を半ば無理矢理に勧誘してくれたアオイさんには正直どちらかと言えば感謝しているけど、厚かましくて恥ずかしくなってくる。ザパンさんを見てると、わたし、は、こ、こんなかんじで、いいのかなあ、と、恥ずかしくなってくる……。ほんの少し頬が火照るのは嫌いではない感触。

アオイさんが眠っているのを初めて見た。眠ることがあるの？と聞いたら、眠りたいときは眠る、と返ってきた。疲れているの？と聞いたら、ただこちらを見つめて微笑んでいた。彼女は遠目から見ると平凡な女性だが、肌に目を寄せれば皮膚の継ぎ目と内部構造の小さな隆起が見えて、その体がそっくり人工のものであるのがわかる。動力と心の由来がなんであるかは、知らないし、聞く勇気もない。

お風呂に入ろうとすると、小学生の頃数ヶ月付き合っていた彼氏が先に湯船に浸かっていて、一緒に入る？とのたまうので、断って逃げ出す。ケーキを作る。マドレーヌも作る。泣いている子供がいる、私だって子供だがもっと小さな子供だ。数瞬ためらうも、手元のマドレーヌを2個手渡す。子供は笑って、ありがとうと言い、子供は菓子を食べて、ありがとうと言い、ああ、夢とはこういうものがいいと私は思う。

学校も「王子様」もメルンテーゼも全て夢かと思っていたが、どうもそうではないようだ。
メルンテーゼはいろいろと不可思議だがどうにも辻褄が合っているように感じられてしまう。
暴君も殺人鬼も現実なんだろうか。

みな夢でもいいし、みな夢でなくてもいい。

うぞうぞと根っこが伸びてきた。