結局、森での探索はそれなりに成果を上げられた。
時々はこうして誰かと連携を取るのも、悪くは無いのだろう。
可能性の獣——ユニコーンの力を宿したエンブリオとの契約も問題なく終えられた。
これで当面は、戦力の増強についても問題は無いだろう。
・・・後は結局、私自身の問題となる。

私は、ものを言うエンブリオとは契約をしてはいない。
各エンブリオの力を借り、私の持っていた力を再現しているだけだ。
無論、完全な再現とは行かず、色々と弊害は出ている。

しかし、この方法しか現状では思いつけないのだ。
私が失ったものを、取り戻すには。
私の半身とも言える、彼を呼び戻すには。

サイネルもまたそれが当たり前であるかのように、言い切った。

サイネルは、本気でそう言っているようだ。
自分はこの世界の住人なのだと、そう言っている。

結局何者かもわからなかった白髪の女が去った後に、そう呟いた。
そうしてサイネルもまた、その場を後にする。

(あなたのあしらうような様子も、やはり彼にとっては久しいもののようで。
彼のほうもさらに声が弾み調子を出していく。言葉こそ違えど取引のことなどもう頭にないかのようにも見える。)

(などと言いつつちゃっかり一歩下がり距離を置く青年だった。笑顔も若干引き攣っている。)

(打ち明けた話に対してそんな風に話の筋から脱線した上に、まるで人を感情の起伏のない冷血であるかのようにかなり失礼な物言いで笑い声をあげる。しかしそれが先程の意趣返しではなく、彼なりの気遣いということは旧知であるあなたなら感じ取れるだろう。）

(そんなツッコミを入れつつも軽く肯定するところ、彼にはその素質があるのかもしれなかった。）

(その質問を口にした青年の雰囲気が、ほんの一瞬だけ、まったく別人のものにあなたは感じられた。）

(そう言って“まず”笑う。——他者を肯定し続けてきた彼にとって、それはもう、ある種の処世術なのかもしれない。
そうしてひとしきり笑ったあと、静かに言葉を続ける。）

(だからゴメンな——と、静かに笑いながらレンツは謝った。

人として生きる——そして人の病を患い、人として死ぬ。それは手段を選ばないあなたにしてみればただ駄々をこねているように映るかもしれない。
しかしそれこそが彼の生きることの意味で、そして願いだった。）

　
　　　　　　右手に、魔術力場を形成した。

　
　　　　　　興味深そうに手に取った。

　
　　　　　　呼吸を整えるように、歩みを止めた。