「チッ、あのグレイナードのうすのろ野郎。
　これで奴との契約関係もご破算。この次は私自身がブランチマンを倒してやる！！」

　イシカリが、ブランチマンに倒されたオレを見下ろして蔑んでいた。
奴だけじゃない、ルプスもレクシーダも清水も、皆がオレを蔑んだ眼で見下していた。
この眼を…オレは覚えている。
忘れはしない、かつて組んだPTのメンバーが、オレを世界から追放する際に浮かべていた眼だ。
敗北者は用済みのゴミだと語る、そんな眼だ。

「ぐっ…オレは、まだ戦える！」

　伸ばしたオレの腕がイシカリの衣に向かって伸びる。
この手が届きさえすれば、オレは再び立ち上がれるだろう。オレはまだ諦めはしない。
もう少しだ…あと少しで手が届く。必死に腕を伸ばす…。

　腕がイシカリの衣を確かに掴み、その感触が掌に伝わった。
そうだ、まだ終われない。まだ戦うのだとオレは言わねばならない。
しかし、オレの視界は急激に闇に覆われ、全てが見えなくなってゆく。

…
……
………

「やぁ、漸く起きたか。随分とうなされていたようだが、嫌な夢でも見たのかい？」

　オレの手はイシカリの衣を掴んでいた。
辺りを見回すが、ブランチマンも庭ガールを名乗る女達の姿も無い。
ただ、穏やかな風景の草原地帯が広がっており、僅か離れたところでは他の仲間達が休憩を取っていた。
段々と記憶が戻ってくる。
ブランチマン達の前から逃走した後、ここまで退いて来て野営を取ったのだ。

「さっきのは夢か…。」

　呟きながら自分の心臓が激しく脈打っていた事に気づいた。
先ほどの夢の影響だろう。汗も随分とかいているようだ。喉も酷く渇いている。

「おい、言っておくがな…！」

　唾を飲み込み、オレは夢の中で最後に言おうとした言葉を口にする。

「オレはまだ戦える。勝手に用済み扱いにするなよ！」

「……夢の中で、私はアンタを用済み扱いしたのかい？」

　オレの言葉にイシカリは愉快そうな表情を浮かべ問い返した。

「ハッ、そうだな…豪くデカイ態度で言い切ったよ。オレとの契約関係もご破算だってな。」

「ハハハ、アンタとの契約はご破算か！ そりゃあ面白い夢だな。」

「そうされても、文句は言えない立場ではある。実際、負けたんだしな。」

　オレの言葉にイシカリは溜息を一つ吐いて見せた。

「フー…アンタにはこの世界に来る前から伝えた筈だったがな？
　私はアンタに最強を期待していない、それよりも最後までこの一揆に参加してくれる事が望みだと。」

「……。」

「気張りすぎだよ、グレン。
　ルプスも言ってただろう？ もう少し肩の力を抜いた方が良い、と。
　あの青年はお頭はともあれ、中々勘が鋭い。」

「…奴が勝手に言ってることだ、オレは今が平常運転だぜ？」

「当人より第三者の立場で見た方が、よく分かるものさ。
　私と組んで冒険をしていた時は、もう少しは柔軟性があったよ。
　今のアンタは気張り過ぎだ。部隊を…PTというものを組んでムキになっている、とね。」

「知るか。オレはもう少し寝る。
　ブランチマンを、奴らを倒す術はもう考え付いている…起きたら、それらを纏める。」

　イシカリの煩わしい言葉を遮る為にそう言ったが、どうやら自分が思っている以上に疲れていたらしい。
そのままオレはまた眠りについた。
今度は夢を見ることは無かった。

グレンは拳を地面に叩きつけた

（そのまま退場（ぇ）

感情の無い口調。

熱と香りがふわりと漂った。

　だいこんは爽やかな表情（※背景）で満足げに語った

　
　　　　　 ふらっと現れたかと思うと、世間話でもするように語り掛けた。
　　　　　　 これ見よがしに、片腕など回してみる。

　
　　　　　 仮にも紋章などにあしらわれている幻獣に対し、酷い言いようである。

　
　　　　　 ただの興味で聞いてみるんだけどね、と付け加え。