私が生命を操る技術を学び得たのは様々な要因に拠るものだが、その根底には私自身が“不死”を得たいという欲求が有ったのは否定できない。
環境がそれを強いたのだとそう思っていた時期もあったが、歳月を経るにつれ、私は自身の意志でこの技術を学び得たのだと納得する事が多くなってきた。

　古来より様々な、それこそ他世界の人間さえも飲み込み受け入れて来たラオルグにおいては住民の寿命には呆れるほど差違がある。
その差違は世界の法則の範囲内なのであろうが、それでも産まれて育ち行く中で、私は多くの人間の死を見る事になった。
私より後に産まれ、しかし私より遥かに早く老いて死す友人や隣人達。
それは少しずつ、私の心に死というものについての興味を抱かせた。

　私が特別だと言う訳ではない。私の同族、即ち呆れるほど長生きする種族の者達は皆、何かしら“死”に関わる物事に関心を抱く。
多いのは宗教に嵌る者だろうか。
大勢の人間の老いと死を見続けてきた人間は、死を恐れその恐怖を紛らわせる…もしくは受け入れる為に宗教に傾倒する。
おかしなもので、幾ら魔術・科学の知識や技術が高まっても“天国”という世界を信じる者は多いのだ。
例え、死後の世界などというものが魔術・科学技術により存在すると証明されずとも…。
（寧ろ否定要素の方が多いのではなかろうか？）

祈りと聞いて何かを思い付いたらしい

　
　　　　　 誰かを思い出すように、わざとらしく一つ身震い。　

　
　　　　　 馬鹿馬鹿しいとの発言に同意するように頷きつつ、この世界の不条理を嘆く。
　　　　　　 やはり色々、思うところは有るらしい。