『探索初日。 今回の探索については、最低限の成果は挙げたといえるだろう。 探索者の多くは遺跡を探索する者とバカンスを満喫する者とに別れたらしく、 私と猫——呼び名がないと不便なのでそう呼んでいる——は前者。 つまるところこの世界、テリメインにある遺跡の探索に向かった。 しかし『遺跡の探索』といえば聞こえはいいが、 生憎とこちらは過去形になったものを現在形で扱う研究者でもなんでもなく、 賭け金と言葉を弄ぶ悪魔に、出るところは出ている猫じみた何かである。 真っ当な探索が出来るわけもなく、襲い掛かってくる何かを ——これまた、悪魔が出てくるのにふさわしい物語の化け物ではなく、 なんだかよくわからない謎の何かたちなのだが——排除しながら進むだけだ。 眼鏡と学術書と白い肌が似合う方々が見たら卒倒しそうな乱暴さだが、 学術的な価値とやらに興味はないので後始末に泣いてもらうこととしよう』 「——」 そこまで書いたところで、日誌にかきつけていた筆の動きを止める。 此処に来ている——いや、探索している人員は、異世界、異界から来たメンバーがかなりを占める。 言ってはなんだが、寄り合い所帯の様なものであり……専門家の割合の方が少ないだろう。 適切な人材が揃っているとはお世辞にも言いがたい。単なる初期時期での偶然か。それとも 「……ま、考えても仕方ないか」 分からないことを考えてもどうにもならない。 ただ、想像をしないこともよくない。 想像に踊らされない程度に想像し、遊ばせてもらうとしよう。

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

ヴィヴィは、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。