「いーち、にーぃ、さーん…」

野営の合間、リナは筋力トレーニングをしていた。
腹筋をしながら、その回数を口でカウントしている。

「…じゅーはち、じゅーきゅ、にーじゅっ。よし、まず１セット！」

『山歩きだけできついだろうに…よくやるよ』

呆れたようなフロルの声がした方を見て、リナは

「あら、歌とか踊りにも筋肉は要るのよ？腹筋は特に大事だし、トレーニングで補わないといけないんだから」

と真顔で返す。共通の趣味である「踊り」と聞き、フロルは興味深げな表情をしながら姿を見せる。

「ふぅん…肉のある身体してる奴ってのは難儀だねぇ。身体がついてこないと思うような表現は出来ないわけだ」

「そういうこと。ま、その分上達を実感しやすい楽しさもあると思うけど。」

そう言って、リナは口元で人懐っこい笑みを作る。

「…さて、続きに入らないと。腹筋はあと2セット、他にも背筋と膝付き腕立てがあるんだから」

気合いを入れ直すリナの様子を見ながら、フロルは

「………本当に、よくやるよ」

と、感心と呆れの入り交じった、深い息を吐いた。