（古風だが丁寧で達筆な文字で記されている）


ネクター咲き乱れる天蓋庭園にたどり着いてから、今日で5日目を迎えた。

当初の見通し通り、この場所に留まることで、
ネクターについては十分すぎるほどのサンプルとデータが収集できた。
僕にとってルンテーゼに留まる理由は、
友人の娘であるビブリ君が留まっていること以外は、もはやなくなった。



ビブリ君は………この世界に２ヶ月程度滞在することで、大きく成長を遂げた。
感情に振り回されて、勢いで一揆に参戦した当初の頃の彼女とは、比べるべくもないほどに。

今の彼女は、自身の感情と真正面から向き合うことができるようになっている。
周囲の友人や、恋人に恵まれていたおかげだ。
彼女は、とても運が良かったと言っていいだろう。
それでも、その運の良さは、彼女のひたむきさと、思いやりが引き寄せたものであるとも言える。

今でも危なっかしさこそ残しているが、
それを補って余りある友人達をこの戦いの中で得ることができた。

……もはや、彼女にとっても僕がここに留まっている理由はないだろう。
あとは、彼女にとっては彼女自身の問題。

僕にとっては、僕自身の問題だ。

そう言って、ビブリはエンブリオ：ソプラニアスを
リューゼリゼに引き合わせた。

　
　
　

教樹の取り出した書籍に目を奪われる。

サバスの方を振り返る。