「でも、これを見ると、もう悲しい物語になってしまったんじゃないの？」

彼女は小さく首を傾げる。

「だから、今の説明じゃおかしいと思うんだけど」
『それが不思議な所ではある。残された想いと、君の力の中にある何かが変な風に混ざり合ったんだろう。
作者は本以外には何も遺せなかった。だから、本に強い想いが残ったんだ』
「うーん……」

俺も、全てを知っているわけでもないし、知っていることを全て話せるわけでもない。
今はこれで納得してもらうしかないのだが。

『それより、君はもう少し戦いに集中したほうがいい。
　だから、負けてしまうのではないか？』
「うっ、それは、そうかも」
『俺は君の足跡を綴る本。勝敗もきちんと残ってしまうのだから、気をつけるように』
「はーい」

まだ、不満そうではあるが、話題は変えられたようだ。
もちろん、負けないで欲しいというのも本音ではあるが、
正直、彼女がここで学んだ方が良いのは戦いだけではないと思っている。