ヘクターのパーティと、
水辺に現れるエンブリオとの契約の為、共闘をすることとなった。

ヘクター達が水辺を安全に進むため、
王軍兵士達が待ち構えていない、
抜け道を伝えることを、ビブリオバベル達がかって出たのだ。

噂では、今水辺では、氷の精が現れるそうで、
水のエンブリオとの相性がよいクリシュナにとっても、
願ってもないことだった。

協議の結果、
ビブリオバベルは、クリシュナとオズワルドの
３人で組むことになった。
……オズワルドとはあまり仲が良くないので、
少しバツが悪い。




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そのシェイドは、不思議な存在だった。

黒い影のような、どこか現実感のない、
それでも確かにそこに居るエンブリオは、
ビブリオバベルについてきた。

意思の疎通を試みたが、
人語を解しているのかいないのか、
いまいち不明瞭だ。
それはビブリオバベルの影の中で、
ゆらゆらとたゆたっている。


昔、父に聞いたことがある。
闇の精霊は邪悪な存在だと恐れられがちだが、
それは偏見にすぎないと。
人間と同じように、精霊一体一体個性があるのだから、
十把一絡げにはできないと。

だからビブリオバベルも、彼女を恐れなかった。
それに、不思議とそのシェイドも、
ビブリオバベルのことが気に入っているようだった。

戦闘を行い、力を示してから契約するというのが、
エンブリオと契約のセオリーだが、
シェイドとの間には、そのステップは必要なかった。

彼女は、言葉を語らない。
だから、ビブリオバベルが彼女に呼び名を付けた。



“エリス”という名は、
神話における不和と争いの女神である。
あまり縁起の良い名前ではないが、
今のメルンテーゼの世界で、
“エリス”は生まれるべくして生まれ、
今、私と共にあるのだと、ビブリオバベルは考えている。

石から火が燃えると驚いて、その石を目を輝かせて見た。

借りていた旅行者向けの本を返すと、代わりにと言わんばかりにその本を受け取る。

「あまり、誰某構わず話すべき話題でもありませんしね。」と苦笑する。

そう最後に別れの挨拶と礼をすると、
彼女が契約しているエンブリオの力か仄かに雷光を伴って走り出した。

あの、犬のような変わった男を追いかけにいったのだろうか。


———　この数日後、曖昧な手書きではあるが、
　　　　新しく金髪の女の手配書が世に出回り始めたのはどのような因果だろうか。

　フェルハトは黙ってローラスの話を聞いていたが、
　一段落つくと、急に肩を竦めた。