今回のあらすじ

「おーっすただいま」「おつかい行ってきたどー」「ばっちりです」
こめつぶたちに練習試合申請を任せた零落、だが対戦相手を見て零落たちは恐れ慄いた。
「　賞　金　首　じ　ゃ　な　い　か　」
メントスコーラと呼ばれる賞金首集団の１チームが相手だったのである。

「……あ、練習試合ですねこれ。びっくりした」
ちゃんと練習試合だったことに安堵する零落たちだったが、さりとて無様な戦いぶりでは今後カモとして見られてしまうのではなどと余計なことを考えだす。
かくなる上はメントスコーラ勢を仮想敵として真面目に健闘し、あわよくば相手にしたくないＰＴと認められようではないか、と。

具体的な作戦を練っている時、一匹のこめつぶが言葉を放った。
「かそうてきかー。それなら俺いい方法知ってる」
「敵を知り己を知れば百戦危うからずっていうんや」
「敵のもほうっていうのやってみようじゃん」

「うわあ、なんだか妙なことになっちゃったぞ」

遠く、見据える視線は思いっきり泳いでいる。

所詮は思春期の小娘だ。
文化の違い、ズレ、そういったものはあるけれど、結局行き着く箇所は、そんなものだ。
両手を広げて、もうある程度は見ることは出来ただろうと、その姿勢は止めた。

名前。

そう言われれば、言っていなかった事に気付く。
何だかすっかり、主に米粒たちと仲良くなったなんて思い込んで、だから名前も知っていて当然だとばかり。
あはは、なんて軽く誤魔化すように笑って後頭部を掻いて。

ぴん、とひとつ米弾き。
金属と白米が擦れ合い、沙羅沙羅と音を響かせる。
特にないであろう欲念や思惑。
感情の赴くまま気の向くまま些か愛のままに我儘に、
こめつぶたち——＜ぶれいくだんす部隊＞——はくるくると回って釜底を跳ねる。

慣れた所作が、落ちゆく一匹を手の平と指先の間に閉じ込める。
いささか鷹揚に、いささか繊細に。
ぺしん、とポーズを決めるこめつぶががいた。

所作に滲むは達成感か充実感か。
いろいろ諦めた零落がゆっくりと頭を振る。
‥所詮はただの練習試合。
常軌で測れば、半々でしかないはずの結果。
けれどその所作はあまりにも重々しかった。


　　　　——　　Ⅰ.たりおラ　＜ラら＞　

引かれるでも促されるでもなく一匹の犬が従いてくる。

散歩の邪魔だと思ったらしい。

いぬ　は　いささか　不機嫌だ！