そう。

このメルンテーゼで一揆が起こり。
各平行世界から、英雄（とは呼べないナニカも多い）が召喚され──

今日で9日目。


初日は薙疾も含めて皆が街で過ごした。
ラリアンナラルフとルリアンナによる、面接のような模擬戦があったからだ。

そして、その翌日にはもう彼らと共に行動していた。
きっかけは「この世界での初めての戦いに時に、近くにいた」
たったのそれだけではあるが、薙疾は干戈騒乱のこの世界で彼らと出会えたことを幸運と捉えていた。

アルヴィン。
彼は自分の武を──少なくとも、その使い方は理解してくれている。
このまま順風満帆なら、自分を喚んだ人たちの願いの成就…新王の打倒もそう遠くはないだろう。
何よりも彼の指揮にあれば、強い相手といくらでも戦える。
薙疾にとっては願ったり叶ったりの環境を作ってくれているのが彼だ。

モクラ。
元々薙疾以外は余り多くを語らないこのパーティだが、中でもモクは寡黙…
と言うよりも、種族の違いからか、そもそも意思の疎通が難しい部分がある。
だが一緒に戦っていれば位置取りや動きから、彼（？）が仲間を大事に思ってくれているのはすぐにわかる。

クリス。
最初に会った時は「こんな小さい子まで戦いに駆り出すのか？」と、メルンテーゼの節操のなさに驚いたものだが、
自分の世界には存在しなかった治療の魔法や幼さに似合わぬ製作技術など、色々な面で助けられている。
彼女とモクがいなかったら、こんなに好き勝手に戦うのは無理だろうな、と薙疾が独り言ちる。

もちろん、自分が離れている間に他の参加者※1に襲われ、敗北した──と言う報告が気にならないわけではない。

しかし連絡を取った限りでは五体満足で、心だって折られたわけではない。
なら、みんな大丈夫。

新王を打倒し、メルンテーゼに平穏を。
まだ王城側の関係者とは、ブランチマンとしか矛を交えていないのだ。
こんなところで躓く自分たちではない、まだまだこれから──

多少自分に言い聞かせる部分はあるものの、薙疾はそう信じていた。

義心と、少しだけの野望を持って。

合流は、新王の本拠である城内……
それも無人ではないはずの地下牢だというのに、薙疾は上機嫌で声を響かせる。

モクラはただ、相手を見つめている……

モクラは一礼をして立ち去った……

モクはある方向を指さしている……

ハサミを鳴らしている