あ、ひさしぶり。何日ぶりかな。
元気そうだね。あまり調子はよろしくなさそうだけど。

このあいだね、そのキンギョちゃんとおはなしさせてもらってたの。
おもしろいよねぇ。クチヨセだっけ？
別の肉体にほかの生命をひょういさせて、双方に影響がないだなんて。
それってほかのものでもできるの？それともエンブリオだからできるの？
前はアルラウネで、今はフラウを素体にしてるんだね。
前はなかったはず氷の力を感じるからわかるよ。色も変わったんだね。
うん、ぼくも氷の力を持ってる…持ってた、かな…から、ちょっとはわかるんだ。
あれ、言ってなかったっけ？

それで今はそのブラックアニスをどうしようか考えてる、ってとこかな。
前に会った時、そのカエルちゃんの前にもうひとつ契約してるって言ってたよね。原因はそれなのかな？
えへへ。ぼくね、記憶力には自信があるんだ。
エンブリオってさ、10体までしか契約できないんでしょ？
理由は、えっと……指の数かぁ、おもしろいこと言うね。
あ、ばかにしてるわけじゃないんだよ。そういうこじつけというか迷信というか、そういうのって文化を学ぶための重要な要素だし。
うん、まぁあなたも冗談で言ってるってのはわかるよ。
エンブリオと契約して力を使うには、生命力が必要で。
普通のヒトなら10体契約が、身体への負荷の許容範囲内ってところかな。
でも厳密に10という決まりはない。一般的ではないってだけ。
ヒトによってはそれ以上契約できるけど、保障はしかねるって言われたし。
10なのは覚えやすい数なのか、それこそさっきあなたが言ったような手の指の数かもしれない。
ここでも十進法使われてるみたいだから、キリがいいし。キリが良い数字って覚えやすいもんね。
んーと、それは今はいいかな。ごめんね、話しすぎちゃった。
あなたが悩んでるのは、11体目としてそのこと契約するか、解約するか。
それとも、そのはじめのこをクチヨセするか。
…あれ、そういえばどうしてクチヨセしないの？他のこみたいにすればいいんじゃないの？
何かできない理由があるの？…あるんだ、そっか。それでそれを教えてくれる気はなさそう、だね。

うーん、ちょっと話しすぎちゃったかな。
これから？
あぁ、ぼくは一揆に参加する気はないし、たぶんこれからも参加しないよ。戦うの、あんまり好きじゃないの。
ただ、ぼくがここに来た目的…友だちが、一揆に加勢してるかもしれないから。
かもしれないっていうか…うぅん、なんでもない。
とりあえず、もうちょっと見てようかなって思う。

あなた自身にも興味はあるし。
その身体のつくりとかね。多分ぼくと、どっちかっていうときょうだいと同じように思えるんだけど。
それってさっき言ってた、はじめのエンブリオと関係して…
…ぅ、その目はこわいから、やめてほしいな。ごめんね、聞かないでおくよ。
それにしても、あなたって聞かれたくないこと多いんじゃないかな。
一緒にいるひとたちにも、話してなさそうだし。…ひみつにしておくつもりなの？

まぁいっか。そろそろ行くね。

…名前くらい覚えておいてほしいなぁ。
いくら年をとってるったって、記憶力まで衰えてるわけじゃないんでしょう？


ジェン、だよ。じゃあまた、覚えておいてね？