「カゲちゃんが消えるのもそうだけど、私とカゲちゃんは寿命からして違うから」


「寿命、のう？」
「我がそう、お主が死ぬのを許すとでも思うのかえ？」







黒い姿に、赤い角。月の様な金色の瞳。
私の、私の恋人。私は、彼の恋人。

彼はメルンテーゼに置ける闇の化身。それか、闇の一つか、闇そのもの。
悪魔とも言えるようだけど、いわゆる悪魔とは少し違うように思える。
人を貶める、たぶらかす、惑わす、道を外れすよう誘う…という事からは、ちょっと遠い。
不真面目だけが悪魔じゃない、みたいなこと言われたけど。
そりゃあ、個性は大事だけど。でも、悪い誘いをする魔の存在ってことじゃあ無かったっけ、とも思う。
聖書なんかの規定もあるけれど、とりあえず、どう見ても"悪魔"としては少しズレた存在。のはず。


それでも、私の前では、十分に悪魔をやってる。

急に背後に現れたり、いじわるだったり、甘い言葉で囁いてくる。
私を困らせたりもするし、それを愛しいとさえ感じさせる。

そう、愛しい。愛おしい。

彼だから良いかなと許してしまう自分がいる。
何度か人間の恋人は作ったことがあるけど、ここまで情に緩くなったのは初めて。

今までは、私が子供だったから、なのか。
相手が人ではないから、なのかは分からない。

そういうもので片付けるべきじゃ無いのかもしれない。

…問題なのは、好きなんだから仕方ないって考えると、どうも自分の中に照れが出る事。
さらに困った事に、彼はそれを知ってる。"悪魔"だから。




彼が私にキスをしたとき、彼は私にこう言った。

死を振り切る気が無いなら、そんなものは喰ってしまわねばと、彼が言った。

私から死を遠ざける———奪ってしまう。
それはまるで、別の存在になることを提示されているかのよう。
いや、きっとそう言いたかったのだと思う。
彼の一年と私の一年は同じ日数を並べても、意味を違えてしまうから。


彼は、私の恋人。
私は、彼の恋人。




一緒にいるといったって、恋人でいるならば、ここまで悩むのは少し——おかしいのかも。

何かを求める視線でデルタを見つめながら、手をデルタの肩に置くミアンヌ。
デルタは心底嫌そうな顔で応じた。

どこかから出してきた契約書をべらべらと捲るミアンヌ。
その間にデルタは、闇豹が持ってきてくれたデザートに手を伸ばした。

ナイトメアは、デルタの斜め後ろに立って首を横に振った。

そして、時々相槌をいれながら次々とカウンターにデザートを並べる闇豹に、戸惑いながらデルタは聞いた。

割りと残念そうな顔をしている

サイズどうこうの問題と捉えている

肌をひりつかせている犯人
手の甲に居る火蜥蜴の刺青をなだめるような声で

火蜥蜴は落ち着かない様子で手の甲を這いまわっている
男は大きく息を付き、闇豹に懇願するように

帰るときいて、完全お見送りモード

>>チュチュ

宇宙の真理とかに近いところへ触れさせられて発狂する人間もいますからね。

>>闇豹

以前に聞いたことをいぶかしむ。