【Ｓｉｄｅ．伯爵】
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〜一時間後〜

【Ｓｉｄｅ．ネム】
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この国で『寄生樹』というと、いわゆるアルラウネに近い　
人と植物を融合させたような姿を持つ妖魔を指す。　
　
彼女ら—寄生樹には雌しか存在しない—は人の形を持って生まれ、　
成長と共に植物に近づいてゆく。　
成人になる頃には完全な樹と化すため、彼女らはそれまでに、　
自らが根ざす場所を探し求めるのだという。　
　
それゆえに、少女時代の寄生樹は非常に希少な存在だ。　
捕われては多くの好事家に買われ、　
見世物として、或いは慰み者として消費され続けてきた。　
　
檻の向こうの、生け捕りにされた花の少女を見やる。　
　
精一杯抵抗したのだろう。腕や肢は使い物にならなくなっていた。　
兄上に連れられてきただけの俺には、彼女の価値は分からない。　
こんなにも傷ついた姿でも、買われてしまうものなのだろうか。　
買われようが買われまいが、彼女にとってのその後は地獄に違いないけれど、　
その地獄の中にあるほんの少しの安らぎを見つけ出してやりたいと思った。　
同情に違いない。それもいいだろう。何もしないよりは。　
　
その花にはネムと名づけた。　
名前どおりの安らぎがここにあることを願う。　

（しばし待つ）

1枚の羊皮紙を取り出す。76PSと書かれているのがはっきり見えた。

ぐるり、上から下まで伯爵の出で立ちを眺める。

器用に耳でくいくいと耳まねき？ をしている……