少女はイコンの思惑を察する思考能力も無く、言われた言葉をただ鵜呑みにしている。
…
橋の下まできたところで、イコンがおもむろに衣服を脱ぎだしたのを見て驚き息を呑んだ。
どういう意図かわからなかった為にもたつき、疲れと震えで着替えに手間取る。
…
イコンに手伝われ、なんとか着替えを終えた。

イコンが『プーク』と呼んだエンブリオ。それが危害を加えてこないとは解っているはずなのに、
反射的にそれから身を守ろうと身をそらす。

少女はふらついているが、逃げ延びたい気力がそうさせるのだろう。足を緩めることはなくイコンに追従した。




　　＝ホテル猪鹿蝶＝

尚も冷静で、微笑みかけてすらくれるイコンの様子に、少女も次第に受け答えが出来るようになり始める。
イコンのような表情を向けてくれる人間は、随分久しぶりだったらしく　少女はその顔をまじまじと見詰めた。

そうしてまだ混乱しているが、『食べたいもの』と言う言葉に反応して自身が空腹であった事を思い出したようだ。
控えめに2、3度頷いて見せる。
食堂から貰ってくる、というイコンの腕を無遠慮に掴み——

赤い色が形を変えるたび眉を顰めて目を凝らす。
驚きを隠すようにキリキリと歯を鳴らし、女性に問う

一般論的にも ぐうの音も出ない一言を言われ、いろいろ考えるものの何も言い返せない。

カリスティックの当て布を解き、思い切り振り抜ける。

からん、という音と共に落ちるは棒、否、鞘
男が両手に構えるは

二振りの小刀！