酷い夢を見た。
母親に捨てられる夢。

夢ではなく事実だけども・・・。



だからだろうか目覚めがとても悪い。
いつもの無表情な顔も酷く歪んでいるのが自分でもわかる程に。

時計を見ると9時を過ぎていた。
少し寝すぎたかな？隣で寝ているはずの女性もいなくなっていた。

重い身体を起し、一人で着替えを済まして鏡を覗く。

やっぱり酷く歪んでいる。目も少し腫れぼったい。
まるで自分ではないような・・・。

夢を思い出してまた涙が出てきそうになる。

駄目だ、止めよう。



早々に着替え部屋をでると、キッチンの方から音が聞こえてきた。
マリアが朝食の準備でもしてるのかな。


顔を洗い、キッチンへ行くと

リヴァランだ。


マリアがいない時にリヴァランが私の子守をしてくれたことがあったのだけど、
その時、リヴァランの昔話を聞いたら、とても怖い話だった。

それ以来リヴァランがとても怖くなり、避けるようになってしまった。

目も合わせずその場をそそくさとキッチンを後にした。

リヴァランには申し訳ないけど、あんな話をするリヴァランも悪い。



孤児院の外に出ると息が白かった。
さすがにこの格好では寒いかな？

はぁーと白い息をだして遊んでいるとマルタが悪態をつきつつ水汲みから帰ってきた。

マルタとは相変わらず話がかみ合わない。
そういうところ嫌いではないのだけどね。

でも夢見が悪かったからか、マルタに対しても素っ気なく接してしまい
それだけ言い残し家の中に戻った。
ごめんね、マルタ。


寒さで手をこすりながらマリアを探すけどどこにもいない。

こうして一人でいると不安になった。



産まれてすぐ孤児院に預けられて、そのあとはずっとマリアと一緒。
何をするのもマリアが傍にいてくれた。
だから私にとっての母親はマリアになるだろう。

そのマリアがどこにもいない。


ずっと一緒だった人がいないとこんなにも寂しいものなのだろうか。
それともやっぱりあの夢のせいだろうか。

早くマリアに会いたい。

ただそれだけだった。
別に遠くにいっているわけではないのだけど、なんだか胸騒ぎがする。
そう言う事に敏感なのは、きっと母親に捨てられたからだろう。


そんなことを思いつつ、ふらふらと孤児院の中を彷徨い礼拝堂の方へと足を運んだ。


孤児院なのに礼拝堂があるのは元々ここは教会だったからだそうだ。
とても綺麗なステンドグラスがあって、何気に私のお気に入りの場所である。


そこで漸く見つけた。
マリアは私のお気に入りの場所にいたんだ。


祭壇の前で何か祈りを捧げていて、静かにしている。
そんなことお構いなしに私は駆け足で後ろから抱き付いた。

とても暖かい。

うん、本当に何でもない。
ただ何故かそうしたかった。

優しく頭を撫でてくれるマリア。
大好きなマリア。
ずっと、ずっと一緒だからね。

どうして、そんな考え方ができるんでしょう、と呟いて。

顔を伏せて息を吐き。

ちょっと羨ましいように顔を見上げて尋ねます。

そうしてから、改めて、ぺこりと頭を下げて。

自分の住処を説明してから、できるなら、また後日に話をしたいと希望します。

（期間があいたので　一度別れたあとの話ということで！）

（ジト目で見る妖精を気にした風もなくにっこりと微笑んで）

（それから遠慮のない視線を向けて）

頭を下げ、逃げるマリアを見送りながらぽつりと。

そのままくるりと踵を返しました。

シスターマリアに抱きついて頬ずりしているクマのぬいぐるみ。

こくりこくりと頷くクマのぬいぐるみ。

微笑まれ、へへーっと照れた。