枯れた土地には城へと続く地下通路が存在した。乾燥した地面のひび割れに紛れ、入り口が
ぽっかりと穴を空けている。穴を下り、軟らかい砂を踏みしめる音が石畳を叩く靴音へと変わった。
地下通路には頑丈な作りの扉が幾つも連なっており、固く施錠されているものもあれば、扉自体
が外れているものもある。作りは一様に同じと思えるが、他に共通している所があった。手錠や檻、
拷問器具と思われるものが部屋のあちこちに転がっている点だ。恐らくは地下牢として長く機能
してきたのであろうが、それにしては妙だった。

　この大規模な反攻が始まる前、新王に歯向かった者たち。彼らは悉く返り討ちにされたが、その
全てが戦闘で亡くなった訳ではないはずだ。命からがら逃げ延びた者や、新王軍に捕らえられた
者もいるだろう。その捕えられた者たちが、この地下牢に閉じ込められていてもおかしくはない。
だが、ここには誰もいない。

　考えたくはないが、新王は捕えた者たちを生かすことなく、その全てを殺してしまったのだろうか。
もしそうであるならば、賢明な処置とは言えない。その所業が知れれば、新たな火種を生むだけだ
という事は、少し考えれば誰にでも分かる。一時的に消し止めたとしても、そういった出来事はいつ
までも燻り続けるものだ。

　実際、この度の反攻はそのような新王の愚挙が引き金となっている可能性は高い。我々の知って
いるのは、新王がネクターを独占し、徐々に逼迫した民、我々が王の打倒を掲げ城に攻め入った、
という事であるが、何故今なのか、そして誰が扇動しているのか、誰に尋ねても首を横に振るばかり
だ。ただ反攻に参加しただけの者にとってはこの状況でも問題は無いのであろう。しかし、我々は
一地方領の領民を代表した集団である。それでは立ち行かない。

　なし崩しにここまで攻め入ったものの、情報の不足は全く解消されなかった。なんといっても、我々
は王がどのような人物か、その一端すら知らないのだ。それこそ、ネクターを独占した、という事し
か知らない。これで良い訳がない。

　私は城の外周で情報を集めて回った。しかし虱潰しにあたってみても、この反攻の実態を知る
人物にはついぞ出会えなかった。それならば、城内へと赴いて新王の内部から情報を引き出す
しかない。どのような手段を用いても。

言いながらミチエの抜けた一同を見渡す。

シツジに赤いロープを差し出す