◆ Intermission　→side:A


「ねぇ、知ってた？
　お外に咲いているバラの花には、棘があるんだって。」

窓際の黒い髪の少女が、窓縁に外を眺めるようにして並べられたぬいぐるみたちに話しかけています。
その手には、部屋に飾られた花瓶に活けられたものを抜き取ったのか、一輪のバラを持っています。
彼女はそのバラの茎を握り締めるように持っていましたが、それは全ての棘が丁寧に折られており、
万が一にも彼女が怪我をしたりすることのないように、との配慮が見て取れます。
尤も、バラに棘があることを嬉しそうに語る彼女は、今まで棘の折られたバラしか見たことがなかったのでしょう。

やがて、窓から外を見ている少女に気付いた庭師に手を振ると、持っていたバラを花瓶に戻し、
窓際にいたぬいぐるみの中のうさぎを連れると、ふわりとベッドに横になります。


しばらくした頃。
ベッドの上の天蓋をぼんやりと眺めていたところに、がちゃりと鍵の外れる音が聞こえました。
うとうとしかけていた彼女は、嬉しそうに半身を起してドアの方を見遣ります。

「お父様！」

そこには大きな花束を持った男が、少し疲れた笑顔でそこに立っているのでした。


+ + +


お父様と呼ばれた男が、花瓶の花を、先程持ってきた新しいものと取り換えています。
古い方の花も、葉先が僅かに萎れてはいましたが、見ればまだまだ十分に飾っておけそうです。
しかし、男はそんな花を、惜しげもなく屑籠へと捨てていきます。

「飲めたかい？」

花を取り換え終えた男が、優しげな口調で少女に話しかけます。
少女は涙目になりながら、ぷるぷると首を横に振ります。
目の前にはグラスに注がれた水と、粉薬の包み紙。
どうやら薬を飲むのに苦戦している模様です。

「ダメじゃないか、ちゃんと飲まないと。」

「だってこれ……、苦いし、変な匂いだし、おいしくないし……。」

「そんなの、薬なんだから当たり前じゃないか。
　ほら、口を開けて上を向く。」

「むー……。」

男に促され、少女は渋々それに従います。
口の中にさらさらと粉薬を入れられると、むせ返りそうになりながらも、必死で水でそれを流し込みます。

「はい、よくがんばりました。
　ご褒美に飴ちゃんあげようね。」

そう言って、男はポケットから小さな飴玉を一粒取り出します。
彼女が薬の嫌な後味を飴でごまかしている途中、
ふと、ベッドの上にいたうさぎのぬいぐるみが男の目に留まります。

「そういえば、そのウサギの子の名前は決まったのかい？」






「その子はね、ミオクローヌスっていうの。」

そう言って、目深にかぶっていたフードを脱いで見せます。

ですが、さして人とちがうわけではありません。
そう言いながら、フードをかぶり直します。

そう言って、シュウスケは赤い花をひとつ、取り出した。

そう言ってフィリアスは、魔力を放出して宝玉をつくり出し始める。

変身　の掛け声とともに、シュウスケが宝玉をベルトにセットすると、宝玉からまばゆい光が放たれ…
次の瞬間には、強化外骨格を装着していくシュウスケの姿が見えた。

迂闊に近づくと逃げられてしまいそうと思い、尻尾だけふわふわさせている

苺香は対抗するように、ぐっと背伸びしてみます。
しかしそれでも、ミオの身長には届かないのですが。

３０ｃｍにいわれても説得力がないのである

魔導アーマーのでかい手がずんどう鍋を抱えている。
どうやらカレーのようだが……

どこからかゴソゴソと香水を取り出しながら。