ワイバーンから摘出した鱗や目玉や爪を一晩じゅう血の鍋で煮溶かし、銀メッキのボウルによそった。それから、余った血で地面に魔法陣を描き、その中心にボウルを据えた。これで儀式の準備はできた。儀式の手順は昨日思いつきで決めた。骨を魔法陣の周りに設置するとよりそれっぽいきがしたので。そのようにした。

魔法生物を作るために、決まった手順というものは存在しない。魔法生物を作るのは、魔法なのだから、ありとあらゆる魔法と同様に、手順は必ずしも決められたとおりに行使する必要はない。ようは、魔法行使者のイメージや、精神的な気分の持ちようが重要なのだ。初心者が高位な魔法使いの作ったレシピを使うのは、そのほうがイメージを固着させやすいし、成功するという自信もつくからだ。

かくいう僕も、魔法生物を作ることに関しては初心者なのだけれど、今回はあえて自分なりの自分で考えたやり方でやってみることにした。なんとなく、それでうまくいくようなきがしたからだ。なんとなく、うまくいく、という感覚はたまに沸き起こるものだ。うまくいくと思って、失敗することがないこともないけれども、少なくともそれが僕にとって後悔するような結果になったことはない。だから、なんとなくでもやるのだ。

僕は魔力の才能はないからけれど、メルンテーゼの山岳という土地は強力な地力が湧き出ているし、魔法生物のイメージもこれまで契約してきた子たちを見てきたから、イメージすることは容易いことだ。呪文（さっきかんがえた）をつぶやき、ワイバーンの亡骸に魔力と思念を集中させた。

・・・とくに大きな輝きや爆発的なことは起こらなかったが、ふっと気がつくと新しい生物がそこに産まれていた。イメージとは若干細部がことなるものの、僕の考えたワイバーンのエンブリオを作り出すことができたようだ。名前は・・・緑色の鳥から名前をもらって、ウォブラと名付けよう。産まれたばかりの彼女の眠たげな赤い瞳と、目が、合った。

「へぇ、あんたがワタシを創ったの。とりあえず、契約しましょうか。フフ」

じっくり観察されると、羽根をパタパタしたり、もじもじしたりします。

匂いのことを聞かれると、自信満々に胸を張りました。

なんかかなり適当な出会いだったようです。

近くの原っぱに籠にかけてた広い布を敷いて、どうぞこちらにと薦めます。
とつぜんのピクニックの構えです。

その間に、カレー妖精はくるくると宙を舞ってなにやら黄色い燐粉を周囲に振りまいています。

くるくる回ってじゃーんと両手を宙に持ち上げたカレー妖精の手の上には、いつの間にかカレーの皿が載ってます。

それはほかほかのチキンカレー！
蜂蜜でカレールゥに溶かして、さらにじゃがいもの代わりにサトイモを使った、ふんわり味です。

ずずいっと前に突き出されるカレー。
その脇では、アムルが水筒から冷たいお水をコップに注いで置きました。