仲間と出会ってしばらく経って、まだぎこちなさはあるものの、
彼女は少しずつ人間らしい感情のようなものを芽生えさせはじめていました。
前衛に立って戦うことは、あまり得意ではありませんでしたが、
傷付けば味方からの治癒魔法が飛んでくるし、意外にしっかりと戦えているのでした。
そんな彼女の身体に異変が起き始めたのは、幾度目かの戦闘の後のことでした。
この日も無事に戦いを終え、談笑する輪の中。
この中で、彼女はいつも黙って話を聞いているのが日常となっています。
しかし。
がたん、と音がする程に勢いよく立ち上がると、夜の闇の中に溶けるように、どこかへ消えてしまいます。

「どうしたんだろうねー？」

「あの子の考えてることは、よくわからないから。」


+ + +


誰もいない暗い暗い木立の中に、白い何かがいます。
蒼白い髪に病的に白い肌、闇に溶ける黒い服。
少し苦しげな様子で肩を揺らしながら、細い指が食い込むほどに、きつく右腕を押さえています。
だらりと力無くぶら下がった右腕の袖からは、黒いインクのような液体がぼたぼたととめどなく流れ落ちています。
苦悶の表情を浮かべながら何かに耐える彼女でしたが、
やがて、嫌に粘滑な、湿っぽい何かがぼちゃりと落ちる、少し大きな水音がしたかと思うと、
それっきり、姿が見えなくなってしまうのでした。


+ + +


翌朝。

「……おはよう。」

物陰からふわりと湧き出すかのように現れると、不愛想な朝の挨拶を呟くように告げます。

「おはよー、昨夜はどうしたのー？」

「……別に。」

彼女はいつもと変わらず無表情で不愛想なままでしたが、
注意深く観察すれば、いつもと違う様子に気付くかもしれません。
彼女の手を隠す長い袖の下で、いつも以上に庇っている右腕の肘から先が、無くなっていることに。

※触れると魔力が吸われます

まずは尻尾を見せ、尾びれがキラリと光る

次に手を天に向け、ミオに当たらないように軽く雷を放つ

そう言いながら一杯コップに注ぎ、差し出してみました。

※重要なのはそこじゃない。