「オウニ先生・・・いえ、すいません、オウニさん、今日の魔法生物もかわいいですね。」

オウニさんは、魔法生物屋さんだ。縁があって、たまに作成した魔法生物の遊び相手をさせてもらっていた。オウニさんの作成する魔法生物は、どれも生き生きとしていて、とっても魅力的で、その手の分野の人達ならば知らない人はいないほどだ。
僕にとっても、オウニさんは心の師匠であり、尊敬する魔法生物家であり、憧れの人だった。だから、つい「先生」と呼びたくなってしまう。けども、オウニさんと僕の関係は師弟ではないし、本人もあまり先生と呼ばれたくはなさそうなので、「オウニさん」と呼ぶことにしている。

「やあ、クレーさん。今日のは山壺蛙の臀部を異転種した御寝夢魔だよ」

正直なところ、オウニさんのおっしゃることは、ただの妖精屋の一人娘だった幼い頃の僕には、難しくてよくわからなかった。けれども、産まれた魔法生物をみれば、それが素晴らしいものであることはよくわかった。
たいていの人口魔法生物は、上手くできていても、喋りがぎこちなかったり、造形が不自然であったり、どこか作り物という感じがあったりするものだ。けれども、オウニさんのつくる魔法生物は、想像上から産まれた異形の姿でありながら、この世に存在していても違和感を感じさせず、まるでそういう新種の生物がもとからこの世界にいたように思わせるのだった。

そんなすごい人とたびたび会う機会があるのは、わたしが魔法生物の遊び相手として適しているかららしい。この辺には子供はあまりいないのと、僕が魔法生物を怖がらないというのもあるだろう。幼少の頃から妖精たちの相手をしてきた僕にとっては、妖精の面倒を見るのも、魔法生物の相手をするのも、それほど差はなかったのかもしれない。

ひとしきり今日連れてきた夢魔さんとおままごとをした後、オウニさんにずっと前から聞いてみたかったことを聞いてみた。答えは聞かずともとっくにわかっていたことだけれど、それでも一度聞いてみたかったのだ。

「オウニさんはどうして魔法生物を作っているんですか？」
「そりゃあ、好きだからね。こういうの」

いい年頃になったころ、家業だった妖精屋を継がずに、魔法生物の研究を始めたのは、オウニさんとその魔法生物たちからの影響が多いにあったのだろうと今でも思うのだった。

クレーデレが顔の角度を変えるのにあわせて左右に揺れたり

顔を覗きこんだりしている

捕食できる陸上生物なのか、むしろ鳥を獲って食う側の陸上生物なのか…
見極めているところなのかもしれない。