サマーバケーション夜の部の企画で、"ハナビ"を上げることに決めたエル。
しかし、今は戦時。いくら祭りとはいえど、練習用を含めた火薬を集めるのは困難だった。

そこで、炎の術を使える人を募り、ファイヤーボールとかあの辺を爆散させて花火を再現するという極めて異例な方法をとる。
火薬が不要になるそれは、同時に花火を見たことのないエルにとって難易度をさらに上げる要因となってしまった。

打ち上げから、上空までのコントロールまではシンプルな作業であり、理解が容易い。
しかし、そこから飛散させるのが、花火を見たことのないエルにはイメージが難しいのだ。

どうしてもいろんな人の意見から「爆散」し、攻撃性をもって下に落ちてきてしまう。
一番ダメージの少ないアイグレーが被害を抑えるために身を投げ打って受け止めているが、
そろそろその身が心配になるレベルでボロボロになってきている。

長い時間をかけて考えたいところであるが、すでにイベント当日…しかも辺が暗くなってきている。
そろそろタイムリミット…土下座もあるな、とリバラが考えている時だった。

爆破練習場にあらわれた一人の女の子。
彼女は月夜霊 千雫。自身が炎の化身となる、九尾の狐とのことらしい。
エルの呼びかけに真っ先に応えてくれた今回のイベント参加者でもあった。

天真爛漫に尋ねてくる千雫に現状を隠すことも出来ず、「実は…」と花火の準備が出来てない事を告げる。

がっくしとうなだれるエル。
そんなエルを横目に、千雫は自身の炎をだしたり消したり…何か案を考えているようだ。

そういえば、炎の扱いが得意と聞いている。その様子を見ていると、ある程度制御が上手いエルさえも
稚拙に見えてしまうほどの神業を連発している。

試しに…と、千雫は固めた炎の塊をバシュッと勢い良く空に飛び上がらせた。
上空に到達するまではエルと同じ、エルのそばで見ていたアイグレーがビクっと震える。

しかしさすがというべきか、千雫の撃ち上げた炎球は爆散せず、綺麗に飛散する。

こうしてできた炎球花火がそれからきれいな花火になるまで然程時間はかからず、無事に花火開催の時間に間に合ったのだった。






本番数分前

無事に花火会場に到着し、ホット一息つく一行。
ひっそりと打ち上げる予定だったが、エルが花火で頭を抱えていたその間に、現住居である
タンポポ荘で大々的に宣伝されていたらしく、思っていた以上に会場に人が集まってきていた。

打ち上げ隊で同行していた千雫に抱きつかんばかりの勢いでエルが感謝を述べると、それにリバラが続いた。

そう…千雫が言うとおり、本番はこれからである。

リバラはそう短く答えると、歩き出しながら「がんばれよ〜」と言い残し、去っていった。

花火部隊の準備は万全。
予定開始時刻ぴったしに、きれいな大輪を咲かせて見せよう、と意気込む打ち上げ班。

いろいろ準備の手際が悪かったり、いろんな人に協力してもらったこの花火大会。
あまり知り合いがいなかったけど、やってよかったなーと始まる前から思えてしまう。

気を引き締めるように顔をパンパンと軽く叩く。
気が付けば開始10秒前。

顔をあげてみると、千雫や他のメンバーと目があった。
お互いに何も言わず、しかし当然かのようにカウントダウンが始まる。

■[SummerVacation] に参加してました！■

宣伝してくれたポポロちゃん、参加してくださった皆に最大限の愛情を！

素敵な企画ページは↓
http://if-ev.tumblr.com/


（花火絵は変更・更新する可能性がございます）

　ポポロは明らかに不良品っぽい機械にものすごい感動している。
　泣きそうなエルを気にもとめず、機械の小箱をまじまじと見つめている。

　絶対に違うと思う。

（少女から差し出された手を、少し不思議そうに見つめつつ
　その表情を、少しばかり柔らかくして）

（目の前の少女に同じく手を差し出し）

（明るい笑顔の少女に、ほんの少しの微笑ましさも感じつつ、差し出された手を軽く握り返した）

気を失いかけた所を持ち直し、青年はささっと起き上がる。
青年の目に映ったのはコゲ肉の無事な姿と、少女によって繰り広げられてる”躾”の光景。

なんだか割って入れる雰囲気じゃなかった。

──────────────────────────────

青年は頃合を見計らって、躾を行う少女に声を掛ける。