隣にその姿がある。その身の中に渦巻く波導の流れを感じる。
精神状態によりその流れとともに共感覚として感ずる色や温度までもを変えるそれは、造作もなくその心を読むことに通ずる。
完璧に隠しきっている筈だと舞い上がるその様を、メルンテーゼという世界の理が生み出した鎖をかいくぐりその上を行ったと信じ込むその様を、私が醒めた目で見つめていることにおまえは気付くまい。それこそがおまえの未熟さで、汚点で、おまえを他ならぬ魔道へ導くものだ。
もしもおまえがその精神を保ったままに魔術を扱おうというのなら、私は。

表情筋は、自分でも驚くほどどこも動いてはいなかった。
それでも私は怖気に震えていた。
その先をまったく違和感なく続けていたと気付いた時、私は隣にある少年にそれを悟られぬように腹の底のみにそれを収めながら、しかし確かに心の底から恐怖していた。