力なくふらついていたとき、唐突に声が掛かる。

力なくそちらを向くと……見覚えのある札と生気の感じない肌を持つ少女がいた。

それは、ヤタのところのキョンシーだった。最近よく見かける気がするわね。

言葉を吐こうとして、詰まらせる。

何も、返す言葉が思いつかないから。

実際、私は今、何も出来ていない。

キョンシーは首をかしげる。

昨日の出来事を思い出す。

そう、わたしはアンナとの契約を解除した……いや、解除された。

それが意味するのは、私が不要、という事実……。

キョンシーが息を呑む。

どうするか、だって？

そんなの……そんなの……

……いけない、つい声を荒らげてしまった。

なのに、キョンシーは律儀に微動だにしない。そして、私に問いかける。

決まってるじゃない、アンナの力になりたい、アンナに声をとどけたい……

アンナはそういう人だから、自分に不必要な物は積極的に自分の周りから排除する。

きっと私は今、排除される側にある。

…………。

アンナの親がそうであるように、おそらくアンナもそうであるから

しばらく前にいた、パロロコンのことを思い出す。

彼は今、どうなっているだろうか。

たしかに、私はまだ『側にいるな』とは言われてない。

けど、いつかそう言われてしまうかもしれないから、それが嫌で、怖くて


いいのだろうか、私が側にいても。

側にいたいという気持ちと迷惑をかけたくないという気持ちがせめぎ合う。


そんな気持ちを察知したのか、キョンシーが曲がらない腕を此方に伸ばし、私の頭を撫でる。

気がついたら、私は自分から撫でられに行ってた。

ほんとに、それは無意識に、あの時の会話みたいな、無意識で。

死人の手なのに、どこか暖かさを感じた。

キョンシーの言葉に、ハッとする。

アンナに聞かないほうがいいかもしれないけど。

キョンシーはくすっと小さく笑顔を作る。

私も、釣られて笑みを見せる。

すっと下がって躱すと、青年はぶつぶつと単語を唱え始めた。

小さく、しかしはっきりと。
青年は言葉を紡ぐ。