【減衰】に対してメィレーが聞いたのは、ただ一つ。
「あなた、時間や空間のエンブリオについての話は聞いたことがある？」
それに対して小さなエンブリオは首を振って答えた。
そう、と溜息をついて再び水辺の奥を見やった。あの魔神とやらなら何か知っていたかもしれないが、今はもうこの場にはいない。
彼女のエンブリオ捜索はこうして振り出しに戻るのであった。
「当分はマコトやソルト達に引っ付いて行動しながら情報を集めるしかないわね…時間のエンブリオさえあれば多分なんとでもなると思うのだけど」
「いるかもわからないのにどうしてそこまでいると確信して探せるわけ？わけわかんないんだけど」
そうメィレーに【減衰】は言い放った。人間ではないとはいえ、エンブリオ以外のものにまだ慣れないのか、棘の立つ言い方をいちいちしている。
「そうね、あなたたちから見ればそうかもしれない。でもね、なんとなくーー確信しているの。私の世界にも時間の魔獣がいたと言われていたからかしら。なんとなく、この世界のエンブリオと、私の世界の魔獣と呼ばれていたモノには共通点を見出しているの。あなた達のようなプラスとマイナスを司った魔獣もいたしーーまああなた達みたいに直接的なものではないけれど」
「でもあんたの世界とこのメルンテーゼは違う」
「まあ、そうね。そうでしょうけど、私には『いる』気しかしないの。それとさえ契約できれば、全てがなんとかなるはずだわ」

ああ、わかったわよ。次からあんたにもネクター渡すから、機嫌直してよね……

最早招来の舞というより、好き勝手に羅列しているだけのように思えるけれど、
本人は至って真面目な上に、乗り気だった。ぴょんこ、ぴょんこ。