私が眼に違和感を覚えたのは、それから間もなくのことでした。

重いような、腫れぼったいような感覚が眼からずっと消えないのです。
しかし私はさほど気にせずにいつも通りの日々を過ごしていました。

彼女はあの日以来眠り続けたままでした。

やがて私の眼は、徐々に肥大化してゆきました。
痛みで眠れなくなり、両眼がくっついてしまいそうになるほど肥大化した頃、不意に私の中の彼女が目を覚ましました。

死にたくない、と私は言いました。
それは無意識のうちに出た願いでしたが、彼女もまた全面的にそれを受け入れると言いました。

私の両目は融けて混ざり合い、大きな一つの眼となってしまいましたが、彼女の尽力の甲斐あってそれ以上の進行は止まり、私は命をつなぐことができました。
でも、その時にはもう遅かったのです。
私が彼女の言葉をきちんと理解していれば、もう少しましな未来があったのかもしれません。

繁殖。それはすなわち、私を母体として、同一種の個体を増やすための行為でした。
私を看病してくれていた家族から近所に住む家族へ、そしてその人たちの知り合いへ……
巨眼症感染者の数は爆発的に増え、小さな集落はもう取り返しのつかない状態になってしまいました。