アルームの聖処女（２）：
エシュア教の司祭によって発見されたそれは、その見た目からエシュア教の伝説に基づき「聖処女」と呼ばれることとなる。
しかし未だにそれが誰の手によって作られたものか、本来は何の目的のために作られたものか——そもそもそれは本当に聖処女であるのか否かということすら、そしてなぜトラメンストルの最奥に存在していたのかなどは解明されていない。
すべてはただ神の与えたもうた奇跡として、今日のアルームに伝えられている。

怒っているカミユを意にも介さず、鬱陶しそうに、威圧するように睨みつける。

カカは何も喋ることはなく、いつもよりも大きく丸まっている。

　ぼんやりと白い光が立ち上り、僅かに揺れながら人の形へと収束していく…
　二つのお下げ、そしてセーラー服を纏った少女の姿…

背後に浮かぶ金色の瞳を見やる。使徒の数などになぞらえて、
数年に一度の廻りを持たす地方の話はちらほらと聞くが、

ぽつり呟く。見やった先は青ではなくて彼の天使の金色だった。
天使。ネクターを媒介に、人間と契約するエンブリオ。

ぼやくように言って、約束、の言葉に──「ああ」と短く頷いた。

それから少しして。中断の仕草に項垂れる様子に
皮肉交じりに、男は口の端を上げた。

扉が閉まった後、独り語ちる声が静かに響いた。





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後日。


椅子に座し、淡々と話し終えたままの姿勢で、
手前にあるカミユの姿を見やる。

激しい声が落ちた後の部屋で、息を吐くように言葉が首をもたげる。
口にしてから、修道士の服を纏った男は視線を下げて被りを振った。

組んだ手に額をつけていた男が、顔を上げた。
がたりと椅子の足が音を立てる。

背においた手に力が込められ、男が立ち上がる。

散乱した資料の中から、赤砂の入った砂時計がひとつ、
カミユの方へと放り投げられた。

問いには答えず、椅子の背についた片手で身体を支える。

病状の進行については口を閉ざしたまま、
目線と顎先で、再度、扉だけを示した。