俺様は猫だった。
俺様に別の黒猫が喧嘩を売ってきて……その後の事は覚えていない。

禰宜さんもとい、土地神さんの加護が離れた猫と鴨に
そのタイミングを狙ったかのごとく人斬りが襲いかかかる！
どうなる鴨！どうなった猫！？
猫の命は九つあると謂れがあるのに、これでお終いなのか猫ぉぉおおお！？

葛築が奏撫を喰い、結界を破り姿を消した。
行方を追うべく、先ずは急ぎ当主の元へ向かえば、「行動を起こしたか。誰かさんに背を押されたかな？」と苦笑している。
私が何か言う前に「葛築だったモノの危険性を感じ取りながら、奏撫が通うのを止めなかったのは君だよ。」と先制され。「ま、私も警告のみで後は本人の判断任せに放置していた口だがね。」と肩を竦め「テヘペロ」と続ける当主にイラッとする。
「責任の追及は後ほど。今は葛築を追います。」
「行方は解っているのかね？」
「貴方の元に来ていないのでしたら…背を押した人が居る場所でしょうね。」
「おや同意見。ご褒美にその世界へ送り届けてあげよう。」
……。
「何かね、その渋い顔は。嬉しくない？」
「いえ……褒美も何も、最初から私を送る。そのつもりで準備なさってたでしょう？」
「ばれたか」と当主は笑い、「葛築が行動を起こした同時刻に、猫に…ああ、向うの世界へ行ってる私の知る猫ね…その猫に不幸が起り、世界に一存在分の空きが出来たのだよ。」
猫…ああ、屋敷に住み着いていた野良猫又が勝手に移空の門を抜けたとの報告があったな。…何の騒ぎも起らんと思ったらまさかの当主が面倒見ていたのか。
「葛築はその猫が抜けた一つ分の空きに収まったようだね。」
「何ですかその不運じみた偶然の連鎖は。迷惑な。」
「結果を見れば偶然の連続みだいだがね。起るべくして成った事さ。」



土地神が離れ、護りを失った猫は襲われた。
死者を呼び覚まし死霊を惹き付ける彼女と、躰の人間部位が崩壊し16年間培ってきた[葛築と云う自意識]が揺らいでいる[彼女]が言葉を交わした。
葛築が失った、土蜘蛛内の人間因子と近い成分を持つ奏撫が、いつものように葛築に会いに行った。
奏撫だけでは足りぬ、葛築が必要とする因子の大元を持つ岩絃への道を求めるなら私の元へ来るべきだし、純粋に生き延びる力を求めるなら土地神の元へ行ったやもしれぬが、崩れた死霊の[彼女]は思考より感性に従い怨霊呼び込む彼女の元へ向かい。
向かった先では丁度席が空き。
追っ手の朔位を送るべき場所もまた、丁度土地神が離れた分だけ空いている。

偶然は最初の二つだけ。後は、水が地の形に合わせ流れ往く如く。成るべくして成った結果である。
この結果を望まぬのなら、最初から地を馴らし都合の良い場所に水路を掘っておけば良かったのだ。[葛築]と云う堤防を作り上げ、堤防の管理と補強に奏撫を宛がったまでは良かったが。堤防が決壊した場合を考えて無かったようだね、朔位。

君が泣くまで猫を愛でるのをやめない。

言ってから相当怖い状況なのに気づいた様子

ずっとお腹に乗ったままだったのを思い出したようです。

怯えてその場に立ち竦むカカポン、しかし次の瞬間——

突如大きなアームを携えたロボットが出現しカカポンの手前に立ちはだかる！！

浮遊霊が敗者にまとわりついている

俺様に続け、下僕共。

黒猫又が黒猫に威嚇してる

ばっ！と腕を振り上げる

かしゃ　　かしゃ　　　かしゃ　　　か　しゃ　　かしゃ　　　　　かしゃ

　　　か　し　ゃ　　か　　しゃ　　　かしゃ　　　　か し ゃ　　かしゃ　　　　　かしゃ