一揆とやらに参加して幾星霜……嘘デス、数日デス。
この身体にもだいぶ慣れてきました。これもきっとピーチガムのおかげデス。
同行者の人間……探偵、でしたっけ？　リンの字はブルーベリーガムしか無かったので
後で調達手段を考えねばならないデスね。由々しき事態デス！

由々しき事態といえば——
この世界もマタ、支配者によって面倒な事になっているようデスね。
他の連中が戦っているのもヤツを斃すためである、トカ。
ワタシもそのその十把一絡げなのデスかね。……何だか違う気がするデス。

とはいえ……今は考えても分からないデス！
それに王の圧政だの独占禁止法だの、ハッキリ言うとそれほど興味ないデスし！

ただ、王そのものには興味あるのデス。
己の住む世界をちゃぶ台返しにし。
有り余る憎悪、敵意、をかきあつめるモノ。



アナタは、一体どんな狂気を見せてくれるのデスか？




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　旧支配者のエチュード　p1より抜粋

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健やかな発狂生活はまず魔性の強化にあり。
と意味のわからないことを叫び、力の強化に相応しいエンブリオを求めるト＝リは
森林の中を仲間と共にひたすらに彷徨っていた。

民族風衣装の奉仕種族ト＝リをついて歩くセーラー服の少女。彼女に仕えるエンブリオ。
唯一の正気が災いし、発狂したドールやちくわと化したデビル、そして冒涜的な主人という
文字通り気が狂った一団の相手をしながら日がな胃壁をすり減らしている哀れなセイレーン。

そんな少女の横顔をまじまじと見つめ、ほんの思いつきのように彼女は口を開いた。

ほんの僅かに、行軍の速度が落ちて。それを見透かすかのように。

偶然、ときた。
確かにそうかもしれない。ドールのトアは彼女御自ら狂わせたようなものだし、
それ以外で契約したエンブリオはまだ２体。だから、偶然でもおかしくない。

さりとて。

彼女の命の源が、「興味」が尽きぬ限りはいつか。

知ることになるのだろうと思います。


だって、私と彼女が出逢ったことは、偶然じゃないのですから。

　　　　　　　　　　　コズミック・ホラー
　——突如として、宇宙的恐怖に包まれるような感覚が空間を包み込む。
　周囲で穏やかに鳴いていた小鳥は我先にと飛び立って行き、餌を探し彷徨っていた野良猫は尾を立てて逃げ出す。

　少年は慄然たる思いで、恐るべき暗澹の中心へと振り返る。
　あまりにも冒涜的なその気配に、思わず死を覚悟した少年だったが——

　「名状し難き」とはこのことか。別の意味で恐ろしい勢いの少女に対し、思わずきょとんとしてしまう。

突然話しかけられ、少し驚いたような顔をするも、
すぐに表情を戻し、答える。

そうやって優雅に挨拶を返してきた。
いつもは落ち着きがないところもあるが、こういうところだけは育ちの良さが出る。

しかし、神や端末という話はやっぱりわかっていなかったようだ。

薙疾はト＝リをしげしげと見つけめて少し悩んだ後、口を開く。
一瞬だけ、薙刀を持つ手に力が入ったように思えたのは気のせいということにしておこう。

言うと、彼女は誇らしそうに左手の得物…薙刀＜畏不知＞を突き出す。

少し物思いに耽るような仕草のあと、いまさらの質問を投げかける。

あなたの声にファイは驚き、振り向いた。