翌日、探検を済ませたリラはパーティを解散し宿へ。

いつも通りに夕食を食べ終えてからは、アルブスの淹れた紅茶を飲みながら日記を書き始めた。
書きながらふと気になったのか、隣にたたずむアルブスへと目線を向ける。

普段とは違い、エンブリオと話すリラの口調にはよどみがない。
少女の言葉を受けて、微動だにせず立ったままの黒衣の執事は口を開いた。

意外な言葉を聞いて少女が表情を変える。

話す内容とはうらはらにアルブスは、うれしそうな口調であった。
そこへ、音も立てずに白虎が少女の背後へと現れた。

背後に振り向いたリラへとうなづいてみせる白虎。

ですが、と言葉を続ける。

そこまで言って、執事は笑ってみせる。

ごまかすように唸って言葉を述べた白虎は、そのまま姿を消した。

執事が動き、空になったカップへ新たな紅茶を注いでいく。

新たに注がれた紅茶を口にしながらリラは執事へと礼を言う。
執事は静かに頭を倒して、主人への会釈とする。

少女の言葉に、執事は微笑を浮かべて言う。

言い終わるとともに、紅茶のポットを持たない手からクッキーを取り出し、カップ横へとアルブスは置いていく。
置かれたクッキーに誘われたのか反実体化した存在がリラの肩上にでてきた。

クッキーをほおばりだすセレナと、それを見て笑みを浮かべるリラ。
両者のやりとりを眺めながらまた違う満足感にひたりつつアルブスは思う。

セレナ用へと新たに取り出したカップにも紅茶を注いでいけば、
クッキーのにおいに誘われたのか黒猫もあらわれて室内は賑やかさを増していったのであった。

リラへ
おてがみ、ありがと。リラ、いろんなひととであえたなら、よかった。
ボクも、いろんなひととであって、けいけんつんだり、つよく、なったり、してる。
パーティ、またいっしょにくみたいのは、ボクもいっしょ。
つぎにあったときは、リラがどのくらいつよくなってるか、きになる。
しょうたいふめい、なのは……けいけんつんだら、なんとかなる、かも？

P.S
ようせいです。お手紙ありがとうございます。
セレナさんの意見はもっともですね……あの子をしっかりと教育しつつ、
長い目で見守って行こうと思います。
またお二人に会いたいです。そのときは、仲間も紹介して下さいね？

青年が一人、ぽつねんと壁に寄り掛かっている。
向かいの露店で言い合いを店主と客。
その様を気にすることなく往来する人々を、見るともなくただ眺めていた——

客は散々怒鳴り散らした後、ぷいと人々の雑踏に混ざっていく。
残された露店の主は、やり場のない怒りをそこらに散らし始めた。
散らばる果物、鍋、刃物——

と、そこに通りかかった少女。
両目の辺りに包帯を巻いている。
青年の前を通り過ぎようとしたその瞬間、青年は少女の腕を引いた——

腕を引いた直後、少女の近くを掠め飛んできた"何か"。
ひょっとすると青年が腕を引かなくても少女には当たらなかったかもしれない。
"何か"は当たるものなく飛び続け、やがて道端に転がった。

「あ、ごめん」と、青年は少女の腕を掴んでいた手を放す。
力強くない、少し冷たい手。

挨拶代わりに右手の手首を軽く振って、フェイクがリラの前に現れた。

そう言ってフェイクは身体を屈めて深々と頭を下げた。
どうやら受けた恩に対して結構律儀なようだ。

　

そう言い残して、フェイクはどこかへ去っていった。

　　　　　　　　　　幻妖な光を放つ木の葉の裏側から、覗きこんでるあなたはだぁれ？

　　　△　　土　▲
　　（　㊤　皿　㊤）　　がしゃーん
　　（　　　　　　　　）　　　　　　
　／│　　塊　　│＼　　　　　　　　　がしゃーん
＜　　＼＿＿__／　　＞
　　　　┃　　　┃
　　　　＝　　　＝