アウルとガンドが出張でメルンテーゼに来て十五日目の今日の事。
　その日も二人と一匹はいつも通りの朝を迎え、いつも通りの道行を進んでいました。

　今日の進行ルートは山岳地帯。坂は随分と急で、あまり楽な道ではありません。
　それを進む二人と一匹の前に、倒れた大木が一本現われました。それが大きく歩道をふさいでいます。
　アウルはシーに目をやり、その身長と大木を見比べ、少しだけ考え込みました。その後シーの背中に片腕を突き出します。

　アウルはそのままシーを抱き上げながら、大木をひょい、と乗り越えていきました。

　後ろでガンドがぶつくさと話している内容には耳もくれず、
　アウルは自分から離れていったシーの後姿を見ながら、ずっと怪訝そうな顔をしていました。

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　その夜、晩休憩の時の事。食事の後片付けをしながら、
　ライラ君と二人きりになったアウルはこっそりと二人だけに聴こえる声で話し掛けました。

　ライラ君が、遠くでガンドのお手伝いをしているシーに目を向けます。

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　深夜。夜の見回りから帰ってきたアウルが、テント前で見張りをしていたガンドに話し掛けました。

　ガンドが一瞬だけ俯きました。
　その時の彼は置いて行かれた子供のような顔をしていたのですが、それを見たのは、地面の虫さんだけでした。

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　次の日の朝の事。
　大人三人でテントを閉じる最中、それをこっそりと抜け出したガンドが、ライラ君とアウルを背にしてシーに話し掛けました。

　ひょいっ。

　アウルとガンドがメルンテーゼに降り立ってから十六日目の、朝の事でした。


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　なだらかな田園風景が広がる田舎の道だった。すすきが黄金色を湛えて風に揺れている。
　黄金の上空に広がるのは灰色の中に紫を一滴混ぜたような薄曇り色。
　その中、歩道をゆったりと歩く女が一人居た。
　棒付きの飴玉を咥えた、黒髪灰目の、犬の耳が生えた女だった。

　女は一時声のした方向を見たが、その後またすぐに空を見上げなおし、吐き捨てるような喋り方でこうぼやいた。

　飴玉はとっくの昔に棒だけになっていて、紙で出来たそれは噛み砕くと苦いばかりだった。
　それを吐き捨ててまた次の飴玉を取り出す。

明らかに好意的ではない反応の少女。
膝を折ったまま何をできるでもなく、去っていくシーの背中を目で追った。

表情に多く出ないが少し困ったかのような残念そうにも見える表情でいると
後方からの誰かの声が聞こえた。

ライラは事の経緯を軽く説明する。

　ぽっぽが羽音を立てながら動きまわる
　何かを見つけたようだ

　

　

呟いて、抱えていたものを降ろす。

　　　　　　　　　　捨て去られたものたちのための流れにようこそ。