体調不良と、背後多忙につき、メッセ+ドットを落とします。ご了承ください。

・・・戦闘の時の僕と、なにもないときの僕、どチラが本当の僕なのか・・・。分らなかった。物憂げな表情をする僕を金髪の少女が目ざとく見つけ、どうしたのと聞いてくる。事情を説明すると、僕の背中をバンバン叩き「あはは、福ちゃんは福ちゃん、どっちも本当の福ちゃんだよ、だから、アタイはすきなの！」と大笑いしていた。気持ちは嬉しい、だけど、それは僕の求めている答えではない。ありがとうと微笑み返し、用事があるからと誤魔化し、僕は一人になるために外に出た。

外は雪が降っていた。震えながらも、手にすっかり馴染んだ魔砲と儀式用の鈴をそっとなぞる。魔女としての僕の象徴と、巫女としての僕の象徴。
・・・彼女の言うとおり、それはどちらも本当の僕なのかも知れない。ただ、その考えは僕の頭にしっくりこなかった。
「お嬢様、コートをお持ちしました。」
背後から、聞きなれた声がかかる。
「シルヴィか。」
振り返ると、いつものメイド服を着たシルヴィが急いで、走って僕をおってきたのか、口から白い霧を間断なく吐きながら、寒さで顔を真っ赤にしつつ、黒色のコートを手に持っていた。
「ヒナ様との会話をお聞きしました。」
コートを後ろから優しくかけつつ、シルヴィは僕に声をかけた。
「・・・パティカ様はお優しい方ですわ。とてもとても長い間、お嬢様が失踪していた間、お嬢様がいなくて泣いていた私をみかねた風香様が、私に逐一、お嬢様の様子をこっそり教えてくれましたの。
お嬢様が、壊れて魔砲を頭に撃ったときは、私はお嬢様が死んだと思って、ないてないて泣きはらしましたわ。」
「・・・要点をいえよ。」
「お嬢様はどうして力を求めるのですか？」
「降りかかる火の粉を払うためだよ。」
「では、どうして、後ろに下がり、守ってもらわないのです？ヴムザッ様もベーゼア様もヒナ様もお強いですわ。」
言葉に詰まった。引くのは嫌だった。なぜかは分らない。好戦的な本能からだろうなとは思った。考えを読んだかのように、シルヴィは言葉をつむぐ。
「好戦的だからではありませんわ。お嬢様は私に話しかけてくださりましたもの。一人ぼっちの私に。」
「暇つぶしだよ。他のやつは僕を恐れて、お前しか、パンや薬を運んでこなかっただろう。」
「はじめは、魔法を詠唱する声が震えていました。ないておりました。・・・今も死体にこっそり祈りを捧げていらっしゃることを私は知っております。お嬢様が力を求めるのは、—魔女として、ガサツに振舞うのは、他者を守りたいから。
お嬢様は痛みを知っております。誰からも愛されない痛みも殴られる痛みも、守られる惨めな痛みもそれを他の方に与えたくない。だから、お嬢様は優しいのです。」
シルヴィはにこにことしながら、そういった。寒さのためなのか照れのためなのか、彼女の頬はまだ赤かった。彼女がこんな風に真面目に話すのは何年ぶりだろう。とてもとても遠い昔だということだけは確かだった。
「僕の裏家業を知ってるだろう。」
シルヴィはそれでも表情を変えなかった。
「心を痛めていらっしゃり、それを忌み嫌っていらっしゃる。それくらいは分ります。もし—」
シルヴィは言葉を切った。ニコニコとしていた目を開き、僕の方を彼女はまっすぐに見据えた。彼女のそんな表情を見たのははじめてだった。彼女の静かな声音も。
「私が孤児でなければ—、クリスリュレイト家のメイドでなければ、お嬢様をつれてどこか、遠くへ・・・。
なんちゃって。本気にいたしましたか？」
本当は本気だろうなとは察した。シルヴィが何かにつけて、両親が決めた僕の結婚相手に文句をつけているのは、知っていたから。シルヴィはきっと、僕を友人だと思っているから、だから僕の境遇を哀れんでいるのか。
「僕は優しいのか？いつも、ひどいことをお前にいっているのに。」
「はい。私にとっては優しいお方ですわ。」
即答するシルヴィがガタガタ震えていたのを一瞥すると、着せてくれたコートを脱ぎ、シルヴィの肩にかけ、つけていたマフラーを外し、シルヴィの首に巻いてやった。
「お、お嬢様！？おかぜをお召しになったら！」
「・・・そのまま、お前のほうが風邪を引いたら、僕の世話をするのはあのガサツセイレーンになるだろ。ほら、早く帰るぞ。」
「やっぱり、お嬢様はお優しいお方です。」
「おお、おお、そうおもっておけ。」

そう言って、小さな小箱に入ったペアリングを取り出しました。

そう言うと、少し泣きだしそうに。