10:共に闘うということ

　　　　　　　　　彼らの事はメルンテーゼとは異なる世界の出身である以外、
　　　　　　　　　来歴もどのような文化で暮らしていたのかも、私はまだひとつとして知らない。

　　　　　　　　　出会いは四人一組での出場が定められた闘技大会——
　　　　　　　　　そのメンバーを探していた時に彼らが応えてくれたのだ。
　　　　　　　　　エンブリオ入手への協力も引き受けてもらい、共にする初戦は闘技場ではなく一揆の戦場となった。


　　　　　　　　　女性のユキナさんはワードック、男性のアルファさんは人間……なのだが、
　　　　　　　　　アルファさんのほうは言葉どころか、目もろくに合わせようとはしてくれなかった……。
　　　　　　　　　私は人間を数多の交流の中で生きる種族と思っていたが、彼のような個もいるのだろうか？
　　　　　　　　　……また今度、話しかけてみようと思う。

　　　　　　　　　ユキナさんの右腕は義肢らしく、
　　　　　　　　　風変わりなガントレットにも見えたが、かなり高度な機工から成っているようだった。
　　　　　　　　　しかし物々しい装甲とは裏腹、物腰は漣を立てぬ水面のように落ち着きを保っており、
　　　　　　　　　アルファさん同様に口数は少なかったが、しっかりしたお姉さん……なんて称えがしっくりくる。
　　　　　　　　　私にも人間の鍛冶職人に”嫁いだ”姉が一人いるので、印象を重ねている部分もあるかもしれない。


　　　　　　　　　ちなみにユキナさんには弟と妹がいる。まだ幼く、戦場とは無縁な子供達に思えた。

順々に掌で相手を示して、

アーシェと卯の花降しの二名と合流して以降、
ユキナやミルコロ達の後ろに隠れてばかりだ。
かと言って無視するわけでもなく、じっと陰から二人を見ている。

偶に目が合うと威嚇音？を出してさっと顔を引っ込める。
が、またすぐにちらちらと視線を向けてくる。

物欲しげな顔つきをされて、影は困惑したように首を傾げた。
掌で転がしていた石榴を、めきり、と二つに割り開いて、

剣を構え、屈強な敵陣を正面より迎え撃つ。