【めずらしい平和な時間】

レナとプーロは太陽がさんさんと輝く真昼の草原で寝転がっていた。
心地良い風に髪が少し揺れる。

レナはとてもご満悦の表情だ。

・・・まぁ無理もない。
本来レナは戦う力はほとんど持っていないのだから。
この世界に来たのは、自分たちのまだ知らない新しい農耕技術を学ぶため。
言うなれば留学みたいなものだ。

それが一揆によって望まぬ戦いに身を投じざるを得なくなり、
出会った仲間と戦いの訓練をしたり、攻城で傷つくこともいっぱい経験したりと、
レナにとってはまさに散々なものであった。

不安から、こんなことを呟くことが多くなった。
基本ポジティブに考えるレナがこんなことを言うのは考えにくいことだ。
つまりそれだけ大変な状況なのだ。

プーロはくねくねとしながらそんなことを言うように発声する。

確かにその通りだ、とレナは納得し、いつもの表情に戻る。
ただ悩んでいるだけじゃ何も進まないことは親から何度も言い聞かされてきた。
とにかく行動に移すことが大事だと何度も言い聞かされてきた。
そうやって覚えていくことが大事だと何度も言い聞かされてきた。
ヒトは生きるために、他人に迷惑をかけても良いと何度も言い聞かされてきた。
互いに許し合い、励まし合い、助け合うことが大事だと何度も言い聞かされてきた。

空にはゆったりと流れる穏やかな雲。
さんさんと輝く太陽。
そして周りはとても静かな風が流れる広い草原。

だんだん心地良くなってきたのか、心地良い眠気がレナを夢の世界にいざなう。
レナもその心地良さを拒むことなく受け入れようと目をつぶり・・・











「腹　減　っ　た」

突然の声にびっくりして・・・。
そして自分の眼前に不機嫌そうなオオカミがいてさらにびっくりして。

「びっくりしてんじゃないよまったく・・・。　とにかく腹減ったから何か寄越せ」

レナはぷくーっと頬を膨らませて、でもすぐに表情は戻って。

レナがごそごそとリュックから取り出すと、プーロは今にも食いたそうにくねくねとしだす。

「ほう、良い匂いじゃないか」

取り出したビーフジャーキーにはブラックペッパーがかかっており、
良い匂いが立ち込める。
小麦と大豆を混ぜ合わせて、砂糖などで甘みを出した団子、
茹でた野菜のスティックのちょっと濃厚なソース和え、
じっくり煮込んで柔らかくなっている丸ごと1匹入った魚のスープ。

「・・・だが肉が少ないな・・・もう一声だ」

ナオは若干不満そうにレナに言ったが、

レナはそう言って要求を躱した。

「やれやれ、じゃあ我慢するかねぇ。
・・・その代わりそのスープに入った魚は半分もらうよ」

ナオとプーロが若干取り分でエキサイトしつつも、
大したトラブルも無く食べる分を調整できたようで、レナは一安心。

いただきますの掛け声とともにレナとプーロとナオはもぐもぐと一心不乱に食べ始めた！！





なんとも平和な時間である。