※この日記には勝手な妄想や意味不明なネタの類が多分に盛り込まれています。読む方はネタの１つとでも思って軽く流すことを推奨いたします。


もはや砂漠とさえ言える荒れた大地にひっそりと入口を構える、地下牢の並ぶ通路。
一度は道をそれたもののペガサス、れんたろう、アルトの一行は再びその地下牢の通路を訪れていた。

辺りを警戒しつつもそんな話をするアルトとアンジェ。

力を貸しているエンブリオという存在である彼らは、戦闘態勢でなければある程度自由に行動ができる。
とはいえ今も警戒態勢には違いないので最低限の支援ができる範囲に限られているが、その中で他の参戦者達の話を聞いていたりしてくれているようだ。
無論、それでエンブリオが見つかってしまっても契約主がすぐ近くにいることを知らせることになってしまうので、あまり大きなことはできないでいるようだが。

警戒しているのかしていないのか・・・おそらくは後者に近付いてしまっているだろうが。
口を動かし耳を傾けながらも一時は足を止め話題の内容を振り返り、一時は自分のいるところ以外からの物音に身構え。

そうして、どれだけの時間が経っただろうか。
一揆に関わる話題も概ね途絶え、足音だけが響く中途半端な静けさの中、それでもなお歩を進めるが・・・

1人、また1人と異変に気付く。しかし、その原因はわからず解決方法もわからない。
ただただ、繰り返される同じ風景の中を進んでいくアルト。並び連なる空の牢を添えた入り組んだ通路・・・その中を、ただひたすらに進んでいく。方向感覚が鋭い、とは言えないかもしれないが、それでも同じところをグルグル回っているわけではないと自身の感覚が告げていた。

答えは帰って来ない。そこにいる誰もが同じ疑問を抱いているであろうこの状況では、何もおかしいことではなかっただろう。それでも・・・アルトはその静寂に妙な違和感を感じ、足を止めた。

数秒の静寂、不気味な沈黙。もはや１つの足音すら響いてはいない。
歩みを止めたアルトの前に出るものはいない。アルトに並び、足を止め、アルトの顔を見るものもいない。
・・・そして、アルトの後ろで再び歩み始める時を待つ者すらこの場にはいなかった。



・・・そう。今、この場にいるのはアルト、ただ1人のみであった。



思わず辺りを見回し、目では人影を探し、耳は物音を捉えようと澄まされ、頭はこの状況に陥った原因を模索していた。

当然のように何一つ得られぬ状況、進まぬ理解。何事も無いかのように進み続ける時間、加速する混乱。
自らに落ち着けと言い聞かせる。何度もそう呟く。頭の中でも幾度となく復唱する。

状況を動かしたのはアルトとは別の声。慌てて振り向くと、そこにはアンジェの姿があった。

エンブリオさえも姿が見えなくなっていた状況から一転、続々とエンブリオがその姿を現していく。
・・・しかし、先程まで行動を共にしていたはずのペガサス、れんたろうは現れなかった。

アルト達にとって聞き覚えの無い声が耳に入る。声の方を向くと、十字架の描かれたクロブークを被った人物が視界に映る。

ラズロの姿を捉えた時点からアルトは既に身構えているが、ラズロは構わず話を続ける。

そう言うと同時に、辺りが暗くなり始める。天井から吊るされたランプの明かりでは不充分なくらいに闇に覆われ・・・気付けば床から何者かが、それも複数、地面から這い出しているようだった。

そう言ってラズロはにっこりと微笑んだ。

その声が紡がれると同時に、這い出た異形達も目の前に揺蕩う生を・・・アルトを見つめて雄叫びを上げる。

今にも迫ってこようとしている異形達のおぞましい姿に臆する様子も無く、真っ直ぐにラスロを見て言い放つアルト。
エンブリオ達もその意思に続く。

こうして戦いの火蓋は、切って落とされるのであった。