本日は、本とはあまり関係無い話です。世間話程度に思って下さい。

先日、中国で書の売買（オークション）があったそうですが、最高額が日本円にして数千万円だったか、億だったか……そのくらい行ったそうですよ。

実は、日本で書画の売買をした場合、こんなにも高値はつきません。大家の書画でも十数万円で買えるのですよ。
日本での古写本で高値といえば、高知県が買い取った「高野切第二十」7億円くらいでしょうか、すぐに思い浮かぶのは。

中国と日本では、書画の価値観が根本的に違います。そもそも、書の概念が違いますね。
中国の書家は「書は教養のある人物が書くべきである。教養の無い者は書くべきではない」という考えを持っている場合があります。

例えば、彼らは揮毫をする場合に漢詩を即興で作るのですが、日本人が漢詩を即興で作れるには、それ相応のトレーニングを必要とします。僕の手元にあるのだと、これでしょうか。

『詩語完備　だれにもできる漢詩の作り方』灰色の簡素なつくりをした本ですが、分かりやすく漢詩の作り方を説明してあります。

まずい漢詩を作ろうものならば、中国では「無教養者」として笑いものになるそうですよ。僕はそういった経験をまずしていないので、伝聞ですみませんが……。

回り道な説明ですが、日本と中国の書画への関心が金額に現れているのは、こういった点——文化の違いが強くあるからでしょうね。……理由の断片に過ぎないのですが……。
明らかに日中で「金額」という分かり易いもので差異があるのは事実です。

補足として。

「高野切」は第1種〜第3種まである、古今和歌集の最古の写本です。平安時代のものですね。筆者は紀貫之と伝えられています。
普通、伝紀貫之と書きますが、伝とあるものは、多くが別人の書いたものだそうですよ。なので、ここではあえてその言い方をしません。
実際、第2種は源兼行という人物が書いたものだと判明しています。平等院鳳凰堂にある字と同じなんだとか。
1〜3、それぞれ、別の人の手によるものです。

「高野切」は、いくつか抜けがあるため、完本ではありません。
第1種などと言っていますが、全3巻ではありませんよ。古今和歌集の写本とあって、かなり長いですからね。

書道で仮名を習う人は、高野切第3種から習いますね。美しく、また癖が無いものなので書き易いのです。
第2種は結構癖が強いですよ。僕は第2種が一番好みですけれど。
第1種は、巻頭を任されるだけあって、最も上手く地位のある人物が書いたと推定されています。
第1種と第3種は、書いた人物がいまだに特定されていません。

今回の話……、記憶で話をしたのと、僕の勝手な憶測が入っているので、本当に世間話程度に思って下さいね。

……書画をお買い求めの際は、日本の方が安い現実があります。
中国人が日本に来て買い求めている場合も多いのでは？と個人的に思ったりします。