王城。
　ここにもまた、無数の手が埋もれているのだ。
　いくつもの——幾人もの——手と手。それぞれに異なりながら、ただひとつのものを視ようとする歪んだ眼差し。それこそ、通り過ぎてきたあの華々しき庭とは比べ物にならぬほどの。

　誰も同じものを見ることはない。

　それでもこの場はそのように作られ、そのようにいま彼の前に横たわっている。
　恐らくは生み出そうともがくものたちの、思いつく限りの美を並びたてて。

　けれど、と彼は思う。
　しかし、と。

　そもそものはじめには、果たして誰が美なることを知り、それを決めたのか。

　それがうつくしいのだということを？

　ほんとうは誰も、真正に美しいということを知らないでいるのに。

うまく、言っていることが飲み込めない。
構築し直す必要があって……それも、少し前の会話も含めての組み立て作業が、少し、煩わしく、言葉を返すまで間が空く。
"足を動かして"……　"歩きながら"　？

そこまで言って、絶句する。
怒りとも畏怖ともとれない火が青い瞳にともっている。